「老後の資金は2000万円不足する」問題、そもそもレポートの質が低すぎる
鈴木 大垣さん、きょうはどんなお話でしょうか。
大垣 きょう、納得しませんけど、今、巷間をにぎわしている2000万円足りないぞ問題を。
残間 老後は2000万円足りない。
大垣 これね、本当に、お粗末だったと思う。なんか、別に問題がないものを、すごい大きな問題にしてしまって。
残間 結局タイトルは、高齢社会における資産形成管理っていうものだったの。
大垣 これね、題が悪すぎる。「高齢社会における資産形成管理」なんて名前をつけたら、そりゃ期待しますよね。金融庁が半年以上勉強して。実は去年の7月に中間とりまとめっていうのが出ていて、そこからかなり勉強したはずなんですね。ところが、まず、市場ワーキング・グループの報告書になってるでしょう。金融審議会の。これって、投資信託とか、株とかをやってる人たちの問題を考えるところなので、出てる人を見てごらんなさいよ。
残間 見た、一人知ってる。
大垣 これ、投資信託の応援団みたいな人と、それから法学部と政治学の先生と、この慶応技術大学の先生はものすごく狭いところで、金融ジェロントロジーっていうことをおやりになっている先生で、例えば、認知症になったときにどんな人間が行動をするかっていうのを、老年学の、医学の知見を使ってやるのが私の仕事ですって言い切ってる人で。あんまり関係なくはないんですけど、狭いんですよね。
残間 そんなことを最近言ってるんだ、この人。
大垣 で、それ以外は、これ、知ってる人いないでしょう。参考人は二人でしょう。医学の先生とかでしょう。だから、で、内容は、これを読むんだったら、私の49歳からのお金を読んだほうがいいぐらい。大して違わないんだけど、何が問題かっていうと。
残間 みんな、老後、65歳の男性と、60歳の女性が、ずっとそのままいると、2000万円足りませんよって、この。
大垣 2000万円っていうのは、自分たちが発見したんじゃなくて、厚生労働省が呼ばれて、50ページくらいの自分たちのペーパーで説明をしているところに、報告書にもそれがただコピペしてあるんですよ。
残間 高齢夫婦、無職世帯の収入支出っていうのが。
大垣 これがあって、どんどんこれ下がってきてるんです。昔は35、6万いるよって言ってたのが、今は25万でいいんじゃないですかっていうことになってる。
残間 それ、旅行にも何も行けないけどね、それだと。
大垣 うん。で、もっといけないのは、これは全然違うことを言うための資料なんです。厚生労働省が。それを、丸々コピペして、数字を持ってきて、5万足りないので単純に言うと2000万って書いてるだけなんです。だから、この部分はそもそも金融庁が何もしてない部分なんですけど、そこがとんでもないっていう議論に。
残間 でも、それを前提として、足りなくなるから若いうちから資産形成をしなさいねっていうのが、この。
大垣 でもね、その話をするんだったら、そこにエネルギーをかけるべきだと思いません。そんな、2年前の人の省庁のやってるやつをそのままコピペして。それは、厚労省がいいわけじゃないんだけど、足りるように、必要な額を減らしてきてるんです。
鈴木 都合のいいように。
大垣 私の知ってる限り、この20年間で、幸せに暮らすための日本人に必要な金額は10万ぐらい減ってきてるんです。
残間 ああ、そう。
大垣 それで、だから、つじつまが合ってるんで。でも、私の本を読めば分かります。私の主張は、実は厚労省が言っているように足りなくないわけじゃない。貯金を入れてもなお、1000万ぐらい足りないんです。
鈴木 足りないんですね。
大垣 でも、そこは家とか、この中には全然生命保険の、死ぬまで500万円とか放置してあるやつがあるはずですよね。で、例えば鈴木さんだったら、ご自分も、旦那さんも入ってらっしゃったら、そうすると、それだけで1000万あるはずなんですよ。死ぬときにもらえるものが。それは死んでからしかもらえないから、死ぬ前には使えないんですけど、例えば、それはアメリカだったら売れるんですよね。鈴木さんが今売って、600万ぐらいにしたいとかっていうのができるわけ。でも、そういうのをやらせないわけ。で、そういう、ところのいろんな工夫をすると、なんとかなるよねっていうことなんだけど、それをやるためには、市場ワーキング・グループで投信を売りたいっていう人で議論しても、絶対に無理なので。それからもっというと、足りないんだったら投信を買っちゃダメですね。
鈴木 (笑)。
大垣 足りないんだったら預金で置いとかないと。新しいことは何もない。
残間 そうなの。言われてきたこと。業界で。大垣さんたちの世界では。
大垣 うん。なんだけど、「米国におけるプルーデント・インベスタールール」みたいなデータがありまして、これは何を言ってるかっていうと、成年後見をしたときに預かったお金っていうのを預金に入れておいたらダメで、それも投信に入れておくとかで少しは増えていくようにしなさいよ、みたいなことが書かれている法律なんですけど。そんなの、ものすごくわざとらしくいれるっていうのは、投信買ってよねっていう。
鈴木 大垣さん、読むと、意図が。
残間 大垣さんは3年ぐらい前からずっと、ジェロントロジーって言ってるじゃない。
大垣 そう、これって10年前ぐらいに書いてたことと、ほとんど変わってないわけ。だからちょっと頭にきていて。なんでこの10年間、何も積み上がってないのって。
残間 本書いちゃったら、大垣さん。
大垣 ね。ここに出てこられている方で、その領域に業績のある先生もあんまりいないので、セルフヘルプっていう言葉があるじゃないですか。今回、でも、これは別に間違ってないので。都合が悪かっただけで、間違ってはいないです、全然、下手したら、2000万は小さい数字かもしれないです。でも、自分の持っている他の資産はもっとあるので、そういうものは使わないといけないということが一と、二は、これでよく分かるように、高齢期のことを考えないといけない厚労省と金融庁が全然一緒に仕事をしないで、自分の土俵のことしかレポートしないっていうことになってるし。実は、安倍政権そのものは、だからちゃんと働き方を改革して、それで、お金も入ってくるようにするとか。ホリスティックっていうんですけど、ありとあらゆる手練手管を使ってこういうことに対応していかないといけないよねっていうことで、やってはいるんですよね。だから、僕は別に、安倍政権自体は、それに対して、不真面目な対応をしてるようには。
残間 70を超えても働けるようにするにはどうするかとか、いろいろやってはいるしね。でも、バラバラ。
大垣 うん。なんだけどバラバラっていうのが、今の最大の問題じゃないかなって。みんなで叡智を結集するような。
残間 叡智がないんじゃないの。
大垣 これをやれば完璧っていうのは一つもないんです。だから、ちっちゃい叡智をいっぱい組み合わせていかないといけない。それから2番目は、セルフヘルプです。これを見てて分かるように、国に絶対頼らないでくださいという。
残間 自助努力。
大垣 国のいう自助努力は、俺はもう何もしないから頑張れっていうことですけど、そうじゃなくて、自分で自分のことを考えていくっていう時期が明らかにきている。
鈴木 大垣さんの本を読むところから始めましょう。
大垣 っていうか、私の本は全然レベル低いんですけど、まだマシかも。