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上山伸一さん(慶應義塾大学教授で改革プロデューサー)と語る、アフターコロナの働く人々と意識改革

鈴木 早速改めてご紹介いたします。本日のお客様、慶應義塾大学教授で改革プロデューサー、上山信一さんです。よろしくお願いいたします。

上山 どうも、よろしくお願いします。

残間 自分で改革プロデューサーって名乗ってるんですか。

上山 あのね。

残間 みんなが付けた? 勝手に。

上山 長年、30年以上、なんとなく改革をやってるうちに、改革屋っていうふうに説明した方が分かりやすいんですよね。

残間 ああ、そうか。

上山 経営コンサルタントとかいっても、まあ、何やってるかよくわかんないし。

残間 でも、大学の教授って一番分かりやすいよね。

上山 まあ、本業はもちろんそっちなんですけど。何を教えているんですかって言われると、改革を教えていますと。

残間 (笑)。

大垣 改革を。

上山 「改革とイノベーション」っていう授業をやってまして。結構面白いですよね。世の中にいろんな変動が起きると、受けたいっていう学生が増えるんですよね。

大垣 なるほどね。

鈴木 人呼んで改革のシェルパと言われて、大阪都構想の理論的支柱であり、小池都知事のブレーンでもあるというふうに伺っております。上山さん、簡単にプロフィールを紹介いたしますね。1957年大阪市生まれ、京都大学法学部卒業。プリンストン大学大学院修了。マッキンゼーの共同経営者、アメリジョージタウン大学研究教授などを経て、慶應大学教授になられたと。各企業の監査役、戦略顧問のほか、国交省政策評価会座長、大阪府市特別顧問、愛知県政策顧問など、国・地方自治体の改革にも尽力されているということで。

残間 なんか、鈴木さん、段々今読みながらさ、凄い人凄い人ってなってるね。

鈴木 いや、凄いなぁと思って。

残間 なってるね、すごい人なのよ、でも。

上山 漢字が多すぎてね。

鈴木 いやいや。

残間 問題のありそうなところにばっかり出て行ってるってね。

鈴木 (笑)。

上山 まあ、そうですよね。大きいところ、古いところ。

残間 そうですよね。

大垣 普通いけませんもんね。

上山 そうでもないよ。

大垣 すごい難しいんですよね。

上山 東京ガスの人とかね。

大垣 そういう、公共企業のところは。

残間 公共。

上山 会社の人が多かったけど、今はそんなことないです。いろんな人が。

大垣 すごい綺麗なところ。

上山 そう、ハリーポッターみたいな寮でね。

残間 私が知ってる財務省の人も緊急避難で行ったよ。

大垣 同じニューヨーク州だと思えないですよね。

上山 あの頃ね。

大垣 そうか。

残間 田丸美寿々ちゃんも行ってなかった?

上山 ああ、いました。重なってた、1年だけね。

残間 あなたも、コロンビア大学で。

大垣 そう。だから、同じニューヨーク州なのに。

上山 ニュージャージーですよ。

大垣 ああ、ニュージャージーですか。

残間 すごいところじゃない。

大垣 私のところは夜中にバンバンピストル打ったりしてたもん。

上山 鎌倉みたいなところですよね。

大垣 そうですよね、本当に綺麗。電車で1時間ぐらいで。

残間 今、どういうことに一番興味が、矛先が向いてんですか。

上山 今は、もう目の前はやっぱり橋下徹さんと10年以上やってきた大阪都構想ですよね。住民投票が11月1日にあるので、それに向けて何かと忙しいですけれども。後は、ほか、愛知県でしょうね。去年あいちトリエンナーレで色んな世の中をお騒がせする事件が起きていましたけれども、あれの後始末を去年やってたんですけど。今年の次回の準備ですね。その辺も、今始めないと間に合わないですよね。それをやってたり。あとは、東京都も引き続き少しやってますけど。都会の方がやっぱり大変なんですよね。組織が大きいし。関係者も多いしね。で、たまに田舎の村おこし、声かかって行ったりすると、すごいみんな優しくて、素朴で。心が洗われるような気持ちになる。都会って本当に大変。

大垣 顧問とかやってらっしゃると、そういう面倒くさそうなとこをフォローして行かれるんですか。

上山 割とめんどくさそうな所の方が呼んでくれるよね。ご飯の美味しいところや楽しいところはあまり呼んでくれない(笑)。

大垣 ただ、やりたくないことを任されるって感じなんですか。

上山 第三者が入って、外の人が入って、やっぱり問題点を一緒に指摘しながら、組織全体を動かしていくっていうのは、小さい組織だとトップダウンで動くんですよね。でも、大きいところだと、いくら橋下さんとか小池さんみたいなパワフルな人が来ても、それだけでは動かない。だから、何がまずいのかっていうのをちゃんと説明してあげないといけないから。

大垣 でもやっぱり動いですよね、僕らは、普通に単なる普通の先生なので、なんとか研究会とかそんなん呼ばれて、言いなさいとかっていうのはありますけど。

残間 自分の研究。

大垣 そんなんじゃ何にもならないじゃないですか。そのとき聞いてて、これは駄目だなと思うから、コメント・発言はするんだけど、言いっぱなしになっちゃうじゃないですか。顧問とかでこうやって降りて行ってやってくださる方まで雇おうと思う方は本気なんだね。

残間 上山さんと長い付き合いなので、いろいろお世話になっているんだけど、本当に忙しいのに、忙しいみたいなところが全くない。それから、うんと忙しいから、きっとそれに比例して、実入もあるのかなと思うと、どうもそうでもない。

上山 そうなんです。忙しい仕事ほど実入がないので(笑)。

残間 じゃあなんだっていうと、今度若い人で、有望な人を集めて、自分が知っているすごい人を紹介してくれて、勉強会を催してくれたりもしている。

大垣 ああ、なるほど。

残間 だからね、最初はすごい怖い人だと思ったの。

上山 そんなことないですよ。

残間 でも、うんと優しい。あなたは(大垣さんは)怖い人っていうでしょう、変な人って思って、だんだん知るに及んで、すごい人なんだと思ったけど、上山さんは最初すごい人って思って、近づけなかったの。でも本当に優しい。

大垣 確かに、この巨大組織を動かしておられるんですもんね。

残間 それもでも、あんまり、俺が俺がって出てこないのよね。

上山 だから、シェルパって。シェルパっていうのは、いろんな山を登ってるから、初めての山に行っても、このルートいいですよとか、きょうはちょっと微妙だからやめておきましょうとかね。

鈴木 ナイスアドバイザーなんですね。

上山 登る人がいないときのシェルパ

残間 シェルパっていいね、確かに。でも、技がないとできないからね。

大垣 シェルパっててっぺんまで行かないんですかね、でも。どうでもいいですけど。

上山 一緒に行くんです。

大垣 ああ、いくんですね。

上山 でも、一緒に引き返すんですよね。

大垣 シェルパは絶対登った人にならないですね。

上山 シェルパは、一番大事なのは、ここでやめておきましょうって言うこと。

鈴木 その決断が。

大垣 降りる決断。これは重要だよね。

上山 もう一回チャレンジしましょうって。それは大事ですよね。

残間 人呼んで「改革のシェルパ」って、いいね、ネーミングとしてね。

鈴木 このあともお話を伺って行きますが、ここで音楽のコーナーです。

●大人の一曲
残間 きょうは上山さんとちょっと関係があって。私が主催しているクラブウィルビーの、実は合唱団のメンバーなんですよ。マッケンジーのときの研修で、歌を歌うことを練習でやったんだって。

上山 そう、ロンドン行って練習したんです。

大垣 (笑)。

残間 それ以来、歌いたいなっていうので歌っていて、いまや、ウィルビー混声合唱団のものすごく重要な地位を占める。

上山 いやいや。飲み会では(笑)。

残間 そのウィルビー合唱団、私がやってますから、なんでもいいやっていうので、ケセラセラがテーマ曲なんです。なので、きょうはドリス・デイの「ケセラセラ」を。

●大人ライフアカデミー2020
鈴木 引き続き、改革のシェルパ、上山伸一さんにお話を伺っていきます、よろしくお願いします。

大垣 今、ちょうど移住の話を。私が15年ぐらいやってるんですけど、結局、あの当時からもう、今こんな感じになるのは分かってたし、こうやって人を動かしていかないとなかなか解答がないよねと思って始めたですけど、団塊の人はもう動かなくなりましたね。結局何も起きなくて。

上山 団塊の世代が。

大垣 ようやく、そういう意味ではコロナで、職住が切れましたよね。

上山 そうですね。ITとセットで。

大垣 で、若い子が現実に買い出したりもしましたから、これはかなり、変わっていくっていうか、本来変わるべきものがようやくそうだよねってなってきていて。

上山 いろんなものの歯車がね。

大垣 このあたりを、リスナーの方も、ここからどういうふうに生きていくのかなっていうのは、ご興味をお持ちだと思うんですけど。上山さん、どんなふうに思っていますか。

上山 私は、大都会と田舎と、両方旅することが多いですけど、やっぱり若い、子育て世代っていうかな。正確にいうと。子育て世代がやっぱりずっと東京で家族で住んでるより、子供は地方で育てたい。それから、インターネットがあれば十分仕事できる。それから、向こうで友達がいろんなタイプの友達できるんですよね。近所のおばあちゃんと仲良くなれるし。八鍬の人も、東京より全然親切だしとかね。そういうコミュニティがあったかくて楽しい。東京の会社の仲間もいるんだけど、やっぱりもっとダイバーシティっていうか、広がりがあって、いろんな付き合いができるって言うところの楽しさに目覚めて、思い切って移住すると。月に1回出張で来てね東京で友達と酒飲んでればいいと。

残間 そうか。

上山 その辺の成功の方程式っていうか、その辺がね絶対あるんだっていうのをみんなが知っちゃった感じ。

大垣 まだ、会社が、たとえば富士通だ日立だって、リモートワークだって、これは緊急避難的なとこがひとつと。それから一つは経費の問題が多いと思うんですけど、ただみんな、でもやっぱり戻ってくるんじゃないかっていうのが、どっかでね。不可逆なのかと。

上山 それは、別に戻ってもいいと思うよ。子供を育て終わって、夫婦二人で。

大垣 そうなんだけど、会社がやっぱり、地方に行って仕事を探さないといけないってなるとね。

上山 一過性かどうかってことですか。

大垣 そうなんです。東京の会社から給料をもらって地方に住むっていうのが最高の選択っていうか、非常に重要な選択んだと思うんですよね。ところが、みんな今、乗っかって地方に行ったら、結局やっぱり東京に戻っていくんじゃないかと。

上山 今、会社から独立して自分で稼げるタイプの人っていますよね。プログラマーとかね、デザイナーとか。

残間 そういう人はいいよね。

上山 そういう人が一番先に今動いて。

残間 まだ公表してないけど、今年中に会社を、全部じゃないんだけど7割ぐらいを、首都圏から1時間ぐらいのところに移転を図ってる人達っているよ。

大垣 僕、算数で言うとそれって極めて合理的だから、行くんだと思うんだけど。例えば中間管理職の人が、朝きて課長ですって座って、何もしないでも仕事が回っていたところに、急に部下がリモートワークをしだすと、やっぱりジョブを切り分けて、あなたはきょうはここまでやりなさいとか、そういうふうに全く教育されてませんよね、中間管理職の人が。そういう中で、数字を見ていると確かに動くのは極めて合理的なんだけど、現実には、ご専門だと思うんですけど、マネジメントのところが、ミドルマネジメントのところがものすごく重要な感じがするんですけど。

上山 でも、ベンチャーとか、専門職的な会社は、全然問題ない。外資系は問題ない。はっきりしてるからね。外資系の巨大企業を見ていると、あれでできるんだから日本企業ができないと負けちゃうよって感じですよね。だから、できない会社はダメなんじゃないすかね。

大垣 でもやっぱりまだまだ会社ってメンバーシップ制になってて。

上山 カルチャーはそうですよね。

大垣 この改革が一番でかいするんですけど、変わるんですかね。

上山 できない会社はもうダメなんじゃないすかね。中間管理職もいらないんじゃないですか、そもそも。

残間 ずっといらないって言われてるけど。

鈴木 今ドキッとしている方がいらっしゃるかもしれませんね。

残間 結局、30代とか、20代後半の人が、子育てじゃなくても、しかもちょっと、あえていうなら、わりに優秀で有能で、みんながいいねって言う。昔はやっぱり都落ちとか、なんとなく東京から離れるとみんな寂しい思いをしたじゃない。

大垣 それはあんまりないんじゃない。

残間 だから動きが、そっちの方に加速すると思うわけ。なんとなくあの被害者意識の団体がみんなでどっかに行ってもダメなんだけど、十分東京でやれるというよりは、昔の構図で言うと出世するような人が「いいのいいの」って「僕は子育てをした方が大事だから」とかってさらっと言われちゃうと、あれっ、そっちの方が主流かもって思うのは。見てると、お二人は東大だったり京大だったりするけど、そういうとこの人が率先してやらないと、なかなかいかないよ。

大垣 そうですよ。で、できる人はやるんだと思うんですよ。でも、今一番アレなのはたぶん、40、45ぐらいのところで本当に自分を改革しないといけないっていうか。メンバーシップの時代は終わったから、クリンチしてるとろくでもないことになる。そうすると、自分をかなり変えないといけないから。主体的に。そこの意識改革っていうのが。

上山 無理なんですよ。

大垣 ダメなんですよ(笑)。でも、そこが変わらないと。

残間 自覚できないと。

上山 組織にいることを前提に考えるから無理なんです。そういう人も外に出ちゃったら、全然関係ないですよ。ほっぽりだされて。

大垣 この15年ぐらい言い続けてるんだけど、それはやっぱり難しいような気がしないでもない。

残間 だから、朽ちていくんじゃないの。

上山 全員を引き連れて。

大垣 そんなことはない。でも、現実にはそういう方が一番僕は幸せだと思うんです、動かれたら。気分さえ変われば。

残間 その気分が難しいんだ、過去の名声が。

大垣 そこは、自治体側が上手に頭のいい自治体が。

上山 彼らはもっと進んでて、興味ないんです、そういう人たちは。きたらうるさいだけ。

大垣 確かに。

上山 町内会ができて、議事録できてないお前は、とかね。

大垣 そうなんですよね。

上山 俺が司会をやるから、とかね。やめたほうがいいよね、ああいうの。

大垣 僕らも、シニアの住み替えをサポートしようと思って、一番ずれてるのは、若い人しかいらないんです、とか。

上山 そう。

大垣 言われちゃう。

残間 最近、言うようになったもんね。

大垣 稼ぐ人は来てほしいけど、そういう、私の仕事は、課長はできます、みたいな人はこないでください、みたいなね。

上山 そういう感じなの。

大垣 だから僕は、本当に意識を変えていかないと。

上山 変えると、意識が変わったおじさんは、どこに行ったって大歓迎だよね。まず家の前の掃除から、隣の家の掃除からバス停の掃除とか毎日やってると、いい人みたいだって、そこからね。受け入れられるみたいな。

残間 自覚の問題だからね。自分がどういう人間かっていうのが分からないと、変えようがない。

大垣 今、一番必要な改革って・・・。

上山 形から入るっていうのは大事ですよね。

大垣 そうか。

上山 毎朝6時に起きて、とりあえず走るとか、近所のバス停を掃除するとか。そこから入る。そうすると、周りの人が声をかけてくれて。

残間 でも、最近、そうだって。みんな、歩きながらゴミを拾い始めたって、おじさん達が。少なくとも目黒川の一部の地域では。

上山 そうなんだ(笑)。

残間 でも、みんな始めるんだって。

大垣 またそうやって。

上山 あと、カルチャーショックは大事ですよね。私は狭い世界で生きてるんだけど、合唱団に行くとさ、残間さんとか、いろんな職業の人がいるわけ。で、おばさんたちがまた優しくて怖いわけ。

大垣 それはでも、お姉さんって言いなさいって言われましたよ、私(笑)。

上山 そうか(笑)。最初、悩んじゃうんだけど、まあでも、普通に喋ってればいいんだと。

残間 そうすると、みんな、こちらの人たちも、怖い大学の先生だと思っていたら、あんなに素敵、とか言って。

大垣 私も可愛がってもらえるかな。

上山 大丈夫ですよ、合唱団来てください、ぜひ。

残間 指揮してるからね、この人。

上山 そうなんだ。

大垣 ハハハ。

鈴木 上山さん自身もかわろうと思っていらっしゃるということですか。

上山 私は、たまたま仕事もそうだけど、趣味も、海外に旅行するの、ほっつき歩くの、バックパッカーで、好きなんです。17か国。知らない国にとりあえずポッと行くと、生きていく手段がないから、とりあえずいろいろニコニコしながら周りの人になんかしてもらう。

鈴木 助けてもらって。

上山 そうそう。

残間 それはいいね。

上山 いきなりタクシー乗って、近所の田舎の町まで行っちゃうんです、首都に絶対行かないの。大阪に着いたら、大阪の町に行かないで、いきなり丹後半島とか面白そうだからそこ連れて行ってちょうだいみたいな感じで。そこにとりあえず着地して、それで近所の様子を見ながら2〜3日そこで過ごす。最後の日に空港で、飛行機乗る前の日だけ首都で過ごすんですけど。首都は世界中全部同じ。全然面白くない。

大垣 まあ、確かに。

上山 田舎はすごく面白い。

残間 今できなくて、じゃあ残念ですね。

上山 残念なんです。まあ、日本の田舎を今は歩いてますけどね。

残間 そうか。

上山 瀬戸内海に、昔の平家が作ったような街とかね。歩いてると。

残間 山頭火みたい。

上山 そんなにカッコよくないと思うけどね。

鈴木 あっという間にお時間になってしまいました、どうしよう、まだまだ伺いたいんですけれども、よかったら上山さん、またいらしてください。

上山 はい。

残間 本当に。

鈴木 コーラスではのテノールを担当してらっしゃるということですね。「改革のシェルパ」、上山信一さんにお話を伺いました。ありがとうございました。

一同 ありがとうございました。