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渋谷和宏さん(経済ジャーナリスト・作家)と探る、新しい社会のトレンド

●大人の花道

鈴木 早速改めてご紹介します。本日のお客様、経済ジャーナリストで作家の渋谷和宏さんです。ラジオでも、色んな所で活躍されているから、お話もすごく上手でいらっしゃいます。

残間 声を皆さんお聞きになると、すぐ分かる。

渋谷 きょうはアウェイ感があって緊張しています。

鈴木 そうですか(笑)。文化放送でのご出演ということで。渋谷和宏さん、簡単にプロフィールをご紹介します。

渋谷 ありがとうございます。

鈴木 1959年横浜生まれ、12月8日のお誕生日なので、大垣さんのほうが。

大垣 一緒です、一緒。

鈴木 同学年ということになりますね。放送大学から、日経BP入社、日経ビジネス副編集長などを経て、20代から30代向けの日経ビジネスアソシエの創刊編集長に。雑誌は10万部を超えて6年間編集長を務めた後、ビジネス局長日経BPネット総編集長などを経て独立。TBSラジオでは情報教養番組を担当した経験も長くあられます。

大垣 誕生日ね、私の5番目の子供と同じ。

鈴木 そうなんですね。

大垣 だから、きっと何年かしたら、こんなかっこいい人になると。

残間 遺伝子が違うんだから。

大垣 確かに・・・。

残間 でも、昨今どんなふうにお考えかっていうのは聞きたかったの。コロナ渦になって。こんなに大盤振る舞いしていいんでしょうか、GO TOっていろんなもので。

渋谷 本当に6月ぐらいまでは、旅行需要って、対前年同月比97%減。要するに、3%しか旅行に行く人いないっていう状況がずっと続いてたし、インバウンドがいつ戻ってくるかわからない状況なのでやらないともう屍累々っていうところまで追い詰められたっていうのはありますよね。ただ本当にこれからその旅行需要を刺激して、感染抑止と両立できるかっていうのは。一方的に感染を抑止すればいいっていうのと比べてはるかに困難ですから。

残間 ですよね。ヨーロッパはまだまだね。

渋谷 本当にヨーロッパは、ああなるリスクだってゼロとは言えないですよね。

残間 みんなで焼き鳥屋に行って、1本だけ頼んで水飲んで、1000円またもらうと、次のところにいって、また1000円もらう、3本食っちゃった、みたいなのをネットに言わせてたり。無限にずっと食べて。

大垣 最高の蓄財じゃない。それがそういう奴なんですね。

残間 とか、いろんなこと考えて。

大垣 いいんじゃないですか。

残間 悪いとかじゃなくて、こんなに次々に、菅政権になってから特にお金が出ていくけど、大丈夫かなっていう、日本は、っていうふうに思ってたわけ。

大垣 ああ。

残間 でも渋谷さんは。

大垣 負のスパイラルに入るよりは。

残間 シニアの持っている、65歳以上の人の預金額と借金が同じだとかずっと言われてるじゃない。

渋谷 そうですね。

残間 あれは、まだそうなんですか。

渋谷 ええ。ただ、日本の個人金融資産って1845兆円ぐらいあるんですね。去年の3月31日の数字です。1845兆円って、今日本のGDPが500兆円ぐらいですから4倍まで行かないですけど3倍はるかに超えますよね。その大体7割弱を六十歳以上の人が持ってます。ですから、1300兆円ぐらいって感じですよね。で、そのざっくり半分、700兆円弱ぐらいが、現金と預金と貯金なんです。だから最も流動性の高いお金なので、使おうと思えば使えるお金ではあるんですよね。ただまぁ、人生100年時代なって先は長いですし。

残間 ちょっと脅しもきいてるでしょう。

渋谷 そうなんです。これから社会保障がどうなるか分からないっていうので。だから簡単に使えない。その葛藤はあるんですけど、ただ行きたい場所とかワクワクするようなこととか物があれば使ってもいいよ。それだけの時間もあるし、若さもあるよっていう人は、実は2012〜2013年ぐらいからすごく増えてるって言うのは、消費を見ていくとよく分かります。

鈴木 ほお。

残間 麻生さんが、10万円、みんなに配ったけど、そんな困ってなくて、貯金増えたじゃねえかみたいなのを、またおっしゃってたけど。

大垣 あのおじさんはね。

渋谷 みんな貯金に行くか、場合によっては株を買うかとか、そういうことになっちゃいますよね。

大垣 でも、おじさんおばさんは使ってるんじゃないですかね。

渋谷 使ってると思います。

残間 でもそんな使わないって。洋服買いたくないでしょう、試着したくないから。

大垣 うん。

残間 旅行は今まで行けなかったでしょう。

大垣 まあね。ここから動くんじゃないですか、旅行とか。すごい安いもん。びっくりしました。

鈴木 ですよね。

残間 だんだん、上限があるもん。

大垣 まあね。でも、普通泊まれないところに泊まれますよね。あのぐらい。

渋谷 星野リゾートとか、高級旅館が埋まっちゃってるんです。

鈴木 そうですよね。

残間 だけど、なんか不思議な感じ。次の次の世代とかにみんなしわ寄せがいくような気がして。

大垣 でも、今おっしゃったように、今の動き、流行りの経済学の先生が言ってるのはインフレにならない限りは基本的に問題ないんだっていうことも言ってる人がいるわけ。まだまだ国債は日本の中で消費されてるから大丈夫なんじゃないのかなって。とにかく、誰もお金を使わなくなって、どんどん収縮していくほうが怖いわけですよ。

渋谷 そうですね。それを見ると面白いんですけど、ちょっと古い話なんですけど、2013年頃から突然売れはじめてるものとかブームになってる物ってすんごい多いんですよ。

鈴木 へえ、なんだろう?

渋谷 例えばアウトドアなんですけど。ちょっと調べてきたんですけど、アウトドア人口って、一年間に。

残間 なんかやたらと。

渋谷 キャンプしてる人の延べ人数なんですけど、ピークっていうのが、1996年です。この時1580万人いたんですけど一気にこれから減りまして。で、もう2010年頃には700万人とかそのぐらいになっちゃったんですけど、2013年からまた復活して。で、2019年まで7年連続で増加して、また900万人ぐらいまで戻ってきてるんです。

大垣 アウトドアってどういうやつを言うんですか。

渋谷 主にオートキャンプですね。キャンプ場行って。

大垣 今、山を買うのが流行ってますよね。

渋谷 それもそれもその一環なんですよね。山を買ったほうが密にならないっていうので買っちゃう。

残間 自分で一人キャンプとかで。

大垣 ひろしっていう人が、あの人がすごい流行らしてましたよね。

鈴木 ブームになりましたよね。

残間 大垣さんも山を持ってるからやればいいじゃない。

大垣 山、持ってないよ。

残間 山みたいな。

大垣 山みたいになっちゃったちゃんとしたとこ。

鈴木 まだまだお話を伺いたいんですけど、ここで音楽のコーナーに参りましょう。

●大人ダンスアカデミー2020
鈴木 引き続き経済ジャーナリストで作家の渋谷和弘さんにお話を伺っていきます。

渋谷 さっきの2013年問題って何が言いたいかというと、実は2012年に1947年生まれの人が大量引退してるんです。団塊の世代の最も年長の世代が、65歳になって辞めてるんですね。ですから、辞めた人たちがまた消費の最前線に戻ってきて、いろんなものが実は売れ始めているというものの一つがオートキャンプだったりします。

鈴木 へえ。

渋谷 後はアナログのレコード。

残間 そうですね。

渋谷 これも復活しちゃったとかですね。あとは、家計調査見ると面白いんですけど、一家庭あたり、一世帯当たりの年間に使う喫茶店代。これがまた2013年から増えてきているんです。

残間 家にいられないから、みんなコーヒーショップに日経新聞を持っていくのよ。

渋谷 そうなんです。

残間 で、隣の男とは口を聞かないで、自分でずっと。

大垣 でも、僕に言わせると、団塊あれだけいてその程度かよって感じがしますよ。もっと金使ってよかったんじゃないか。

渋谷 でも、それがなかったら、結構2013年以降辛かったかもしれない。

残間 でもね、今時、渋谷さん、また最近その人たち70過ぎたじゃない。

渋谷 うん。

残間 私、ちょっと上の世代なんだけど、私も団塊のしっぽですけど、みんな家で作務衣を着てね。まあ作務衣は大垣さんも着ますが、猫を転がしてる。だから、消費してない。

渋谷 そう、その後なんです。ですから、誰にバトンタッチするか、バトンを渡すかって言う。それは全然できてないんです。

大垣 もうちょっと遊んでもらわないと、こっちも面倒見きれない。

渋谷 コロナ渦でね。

残間 男の人、ずっと家にいる。

大垣 猫でゴロゴロされたら不健康になりますからね。

残間 比喩的にもそうだし、現実的にも、家で猫を転がしてるような人が多い。

大垣 団塊はこれからなんか健康でいることだけで生きていてほしい。

残間 健康のためなら死んでもいいって人たちだけど。

大垣 どっちかにしてほしい。

残間 だって家の中でやってるもん。

鈴木 次の世代にどうやってバトンを渡したらいいんでしょうか。

大垣 僕、渋谷さんに聞いてみたいのが、コロナって面白いなと思うのは、例えばリモートもそうなんですけど、とっくにやっていてもよかったようなことがようやく起きだしているでしょう。

渋谷 はい、そうなんです。

大垣 これをきっかけに、構造がようやく変わるべき構造に変わるんじゃないかという気がしていて。

渋谷 そうですね。象徴的なのが、凸版印刷っていう印刷会社がありますよね。これが、9月から旅行業に進出したんですよ。

大垣 なるほど。

渋谷 何かっていうと、バーチャルリアリティ映像で、例えば唐招提寺の中に行きましょうっていう。実際の移動をを伴わない旅行なんですけど、これが結構。

鈴木 いいんですか?

渋谷 オンライン旅行、バーチャル旅行全体がいいんですね。

残間 すごいクリエイティブになってるよね。

渋谷 なぜかと言うと旅行行きたくても行けなかった人たくさんいたんですよ。授業があって遠出できないとか、飛行機乗りたくないとか。そういう人たちを吸収してるんですね。

大垣 それは団塊にいいね。猫を転がしてるより。

渋谷 全然いいと思います。見聞も広がるし。

大垣 バーチャルの、メガネみたいなものをかけて。

渋谷 ですので、そういう新しい需要が、コロナ後もいけるって思ったから凸版印刷も入ってきたんですね、遅まきながら。

残間 それも団塊の世代にどうやって知らしめてさせるかだな。

大垣 それは、動くんじゃない。

残間 面白いっていうふうに思わないとダメだよね。

渋谷 そうですね。男たちが最近ちょっと元気がなくなってきたなっていう感じですよね。

残間 そうですね。女の人は相変わらず、結構それなりにまた外に出始めてる、気をつけながらも。お金持ってる世代が動かないとね。

大垣 僕らはどうなんですかね。僕らって名前がついていない世代ですよね。

渋谷 陥没した世代ですよね(笑)。

大垣 下はジュニアだのね。

渋谷 ちょっとしたには新人類とか言われた人たちがいるんですけど、僕らはスルーされましたからね。

残間 ビトゥイーン世代って言われなかったっけ。

大垣 名前がつけられないからそうやって呼ぶだけなんです。

残間 そっか。

大垣 積極的な名前がついてないんです。

渋谷 プレゼンスがね(笑)。

残間 しらけでもないんだよね。

大垣 しらけでもない。それはちょっと上なんです。だから、僕らは後始末ばっかりさせられてる。

渋谷 本当に、風呂敷を広げるんじゃなくて、畳むほうですよね。

鈴木 ああ・・・。

大垣 で、上の人が広げたのをきれいにしてると、また下が違うことをやりだす。

渋谷 こっち側でまた散らかると。だから、僕たち、手際はいいんです。

鈴木 感謝しております。

大垣 価値観もわりと欧風だったりしますよね。

渋谷 そうですね。モダニストです。

大垣 割とね。

残間 欧風って何?

大垣 そう、だから、割と奥さんを大事にしますよね。

渋谷 割とリベラルですよね。

大垣 リベラル。だから、そういうので、僕らってどうなるんだろうとかって。

渋谷 どうにもならないんじゃないかと(笑)。次はだから、団塊ジュニアに引き継ぐための。

大垣 団塊ジュニアは大丈夫ですかね。

渋谷 人数が多いとそれなりに新しいものを作ってくれるので。

大垣 それはそうですね。ここまでの、僕は槍穂高って呼んでるんですけど、二つのピークが動いていくと新しい動きが必ず起きるのは間違い無いんです。

渋谷 僕らはカールみたいな。

鈴木 カールも美しいですけどね。

渋谷 ちょっとだけいいですか。

鈴木 そうそう、わざわざ持ってきてくださった、これはなんですか。

渋谷 これ、面白いんです。カルテックっていう、シャープを脱藩したというか、スピンアウトしたエンジニアの方が2018年に作った会社で、光触媒技術を使った除菌空気清浄機。

残間 それが?

鈴木 首にかけるようになってる。

渋谷 そうなんです。これ、ボタン押すとここが動きだしまして。酸化チタンに光を当てることで、金とかウイルスとかを不活性化する、殺しちゃうと。

鈴木 円柱形で、15センチぐらいありますね。

渋谷 そうですね、首にかけてっていう感じなんですけど。フェイスシートでやると、中の空気がね。使ってるんですけど。先日このカルテックが、理化学研究所と、それから日大の医学部と一緒に実際に新型コロナウイルスを。実験室なんですけど、どのぐらい殺せるかって実験をやったんですね。そしたら2時間で検出限界値まで殺せた。一時間半で99.9%殺せたと。

大垣 命がけの実験ですよね、でも、なんか。

渋谷 プロがやりますから。

鈴木 ウイルスの取り扱いも。

渋谷 何が言いたいかっていうと、光触媒技術って、日本人が実は道を開いた技術なんです。1967年に東大の大学院生だった藤嶋昭さんっていう人が。これノーベル賞級だって言われてるんで、毎年実は取り沙汰されたりすることがあるんですよ。ノーベル賞に。ですから、日本独自の技術でコロナに挑んでるっていうのが面白いので、ちょっと僕もこれを買って。

残間 今は売られてるの?

渋谷 売られてます。14000円。

残間 充電するの?

渋谷 ええ、充電です。4時間充電で8時間持つって書いてありました。

大垣 マイクと間違えそう。

残間 渋谷さんって、新しいものとか新しいことに対してはどういう風な情報収集術を。

渋谷 割と好きなんですよね。コロナって要するに環境変化なので、環境が変われば新しいものは必ず生まれるはずだっていうので、結構色々人に回って聞いたりとか、ネット1日中みて、面白いものを探したりとか、結構やってます。

残間 そういうのをずっとやってる人って勘が働くんだよね。なんとなくそこに何かがありそうっていう。

渋谷 そうかもしれないですね。結局変化って、両面ありますよね。変化は本当にビジネスに対してどんな段階でもニュートラルでいい面と悪い面があるので、絶対コロナでもあの悪いことばっかりじゃないよねっていうところからちょっと見つけた技術ですね。

鈴木 日本が先導して、これからコロナウイルスに対抗していくかも。

渋谷 そうですね、日本は家電もダメだし、頼みの環境技術も駄目になってきたし、樹木とかに。

残間 いろんなことが後手後手になってきているから。

大垣 でも、僕は思うんですけど、これまでのエスタブリッシュメントみたいなものが合わないんですよね。

渋谷 絶対にそう思います。おっしゃる通りです。

大垣 だから、今回みたいにドンときてくれれば、一種の戦争じゃないけど、ゼロスタートみたいな感じで、新しい環境をね。

残間 地球規模だからね。

大垣 追い込まれないと日本人って変わらないじゃ無いですか。

渋谷 ちょっと茹でガエルみたいになっていたので、今回みたいに急速沸騰させるほうがいいですよね。

大垣 そうするとピョンと出てくる人が出てきて、いいんじゃ無いかなと思って。

鈴木 変わらざるを得ないっていうことですよね。

渋谷 そうですね。そうしないと、日本人って変わらない。ただ、追い詰められると変わるんですよね。明治維新とか戦後がそうだったように。

大垣 そのときは一気に変わるんですよ。

残間 せめてそうじゃないと、亡くなった方や犠牲になった人も浮かばれないよね。

渋谷 そうですね。

残間 その方達を思えば、やっぱり私たちもこのへんで変わってみるっていうことを一義に考えていい時代。

大垣 とにかく一番邪魔になるのが団塊の世代とか。

鈴木 またそんなふうに口汚く言わないでください。

残間 だんだん死んでいくから大丈夫。

渋谷 いやいや、長いですよ。

大垣 重石みたいにね。私はまだチンピラ扱いだもんね。

渋谷 そうですよね。

鈴木 ちょっとこう、大垣さんが生き生きと。

残間 あんまりそうだよね、同じ世代の人がいないよね。

渋谷 確かに。

残間 下の人はいるけど。

渋谷 そうですね。

大垣 僕らは群れないでしょう、あんまり。

渋谷 それはそうなんです。本当に。

鈴木 これからも、風呂敷を畳む世代として(笑)、ご出演いただければと思います。

残間 こぼしていくので拾ってください(笑)。

渋谷 畳むのも楽しいですよ。

鈴木 大切な役割ですよね。経済ジャーナリスト・作家の渋谷和宏さんでした。ぜひまたお越しください。

一同 ありがとうございました。