JOQRテーマ一覧

未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之さんと考える、ロボット技術の今とこれから

f:id:joqr-theme:20210309111012j:plain

金融・住宅のプロフェッショナルである大垣尚司(青山学院大学法科大学院教授)さんと、団塊世代のプロデューサー・残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。
このブログでは、ラジオを聞き逃した方や、放送内容をもう一度確認したい! という方のために、人気コーナー「大人ライフアカデミー」の内容全てを、文字に起こしてお届けしています。
今回の放送は、ゲストに未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之さんをお招きしてのゲスト回。古田さんの開発したロボットが何を見据えて開発されたのか。そして、古田さんが見据えるロボット技術の未来とは。

オトナの花道!

鈴木 改めて早速ご紹介いたします。本日のお客さま、未来ロボット技術研究センターの古田貴之所長です。よろしくお願いします。

www.furo.org

古田 はい、よろしくお願いいたします。

残間 私は、いろんなもので古田さんの本を読んだり、テレビを見たりしていて、うんと真面目な感じで。真面目っていうか。真面目なんですけど、講義をしていただいたんですよ、club willbeで。そしたら、本当に、これだけ長く生きてきて、結構いろんな人にお会いしてきましたが、こんなにイメージが違う人はなくて。でも素敵だなと思ったので。どこかでって言っていたんですけど。きょう、大垣さんに頼んで、呼んでいいただいたという次第です。

古田 ありがとうございます。

残間 いやいや。

古田 多分、世界一博士っぽくない、頭が蟹味噌の男です。

残間 (笑)。いやいや。

古田 予想以上にバカですよ。

残間 いやいや。だけど、青山学院大学理工学部なんですよね。

鈴木 そうですよね。

古田 大垣さんとは青学繋がりですよね。

残間 大垣さんは、青山学院大学の教授だし。ねえ。

大垣 こんな方もいるんだとかって。素晴らしい。

古田貴之所長ってどんな人?

鈴木 簡単にプロフィールをご紹介しますと、1968年東京生まれ、青山学院大学理工学部助手、科学技術振興機構のロボット開発グループリーダーを経て、千葉工業大学未来ロボット技術センター所長に。福島第一原発で、全フロア踏破可能な災害用ロボットを開発されて。

大垣 あのロボットか、うんうん。

鈴木 政府の原発冷温停止ミッションを成功させました。2018年には、機械生命体CanguRo(カングーロ)」を発表。ロボットの研究開発、機能とデザインの一体化を目指しておられるという。

CanguRoとは・・・?

大垣 CanguRoって何ですか。

古田 CanguRoですか。これは実は、フォーブスにも扱ってもらって、2020年に、Beazley Designs Awardsっていう、ロンドンの大きなデザインアワードを獲ったんですけど。こんなのです。ちょっとラジオなので、あんまり分かりづらいんですが。こんなのです。

www.furo.org

www.youtube.com

大垣 でも、普通に、キャンパス。

古田 これは、研究所。で、今、この青年が出てきますけど、これはロボットじゃないんです。

残間 これは人間ですね。

古田 CanguRoというのは、実は、ドロイドというか、知能ロボット。このあと、ご主人様を呼び止める知能ロボットが。これ、人工知能がついていて、ご主人様の表情を認識して。

大垣 ああ、こいつか。へえ。犬みたい。

古田 そう、犬みたいな感じの三輪車。三輪車犬。やれやれって顔をするとついてくるんですよ。

残間 心配で?

古田 そう、心配で。で、相手してやるかっていう顔をすると、空気を察して、自動で変形をしだして、ロボットからバイクに変形するんですね。

残間 乗ってくださいって?

古田 そう、乗ってくださいと。

大垣 本当だ、バイクになるんだ。

鈴木 ええっ。

古田 で、この状態になると、これはグーグルカー一の10倍のパフォーマンスを持っている自動操縦の技術が入っているので。

大垣 乗ると、運転しないで走ってくれるんですか。

古田 乗ると、自動で運転してくれるし。これ、左右にモーターで。ロボットが左右に傾くんですね。そうすると、高速のスラロームが出来たりする。で、走りながらお尻に振動スピーカーがついていて、「おいおいお前、スピード出しすぎだよ」とか、「おいおい、右前方にコンビニがあるよ」って話しかけてくる。結構うるさい。

大垣 そういうやつ。これはバイクになるだけ?

古田 バイクにもなるし、ロボットにもなる。ロボットの状態だと、人のパートナー。

残間 話し相手になる。

大垣 散歩に連れていかないとギャーギャーいう、とかそういうことはないんですね。

古田 ある。

大垣 あるんですか。鬱陶しいですね(笑)。要するに、犬っぽいのね。

「乗り物って、イノベイティブじゃないな」

古田 そうなんです。だから、つまり何かというと、僕、元々いろんな乗り物を作ってたんですよ。でも、乗り物を作ってるときに、思ったんです。これはイノベイティブじゃないなと。

大垣 なるほど。

古田 うちの妻はかつて、ちょっと変わった乗り物を作った時「これさ、買う?」って聞いたら。「10万ちょっとするんだけど、買う? かっこいいし自動操縦もついてるしさ」って言って、別の乗り物を作ったときに、提案したんですよ。そしたら、うちの妻が、「そんなもん買うわけないじゃない」って。グッドデザイン賞を獲ったものを。

大垣 新しいものを作る人は常にそうです。私の新商品も常にそうです。

古田 何かっていうと、ただの乗り物を作ったんじゃダメで、乗り物の定義を変えて、ときにはロボット、ときには乗り物。

高齢者とロボットの関わり合い、どう思う?

大垣 あれがありますよね。老人用のやわらかいロボット。猫みたいな。

古田 うーん。

残間 動きが曲線的な。

大垣 これ、頑張らないといけないじゃないですか。母が、年頭に飼い猫が死んだんですけど、大変で。フォローが。

残間 ロスで。

大垣 で、でも、今からもう一匹ってやると、もうダメな感じがするんです。次にそいつが。

古田 なるほど。

大垣 猫とか犬とかは20年ぐらいでしょう。

残間 そんなに生きないけど。

大垣 でも、欲しくなる年が70とかじゃないですか。だから、結構やばいわけ。どっちが先かっていう。

古田 分かる。分かる。でも、僕は声を大にして言いたい。それは本当の生き物にしておこうよ。人と付き合おうよって。

大垣 おばあちゃんはそうはいかないよ。

残間 ばあちゃんでも、生身の人と。

大垣 人とは付き合うんですよ。だから、ペットロスに対してね。

残間 そこに機械を持っていっても。

大垣 ごめんなさいね、いいです、いいです(笑)。

大人の一曲

鈴木 ちょっとここで音楽を挟みましょう。きょうは残間さんの一曲です。

残間 古田さんなので、「春よ、来い」ですね。

大垣 なんで?

残間 いつも春みたいな人だから。

大垣 そうかも。

鈴木 確かに、雰囲気が。

残間 希望と夢を叶えてくれる。

鈴木 松任谷由実さん「春よ、来い」。

www.youtube.com

鈴木 松任谷由実さん「春よ、来い」でした。

大人ライフアカデミー2021

鈴木 引き続き、未来ロボット技術研究センター所長、古田貴之さんにお話をうかがっていきます。

ロボット掃除機「ルーロ」に埋め込まれた驚きの技術とは

大垣 古田さん、最近、パナソニックとやってますね。ちょっといい感じの、すごく売れてる掃除機を使ってらっしゃるでしょう。

古田 ルーロっていうロボット掃除機です。

panasonic.jp

あれは僕が開発したものですね。

実は、僕の開発したロボット掃除機は、最先端の自動操縦の技術が入ってる。グーグルカーっていうでっかい車がありますでしょう。あれの、グーグルカーの自動操縦の10倍のパフォーマンスを持っている自動操縦のシステムを我々は作って、人工知能というソフトウェアなんですけど。これは学会賞を2年連続でもらっていて。それを、あの小さい掃除機にガチョッと。

大垣 もったいない気がするな、そんなに賢いのに。

古田 いやいや、ロボット掃除機って、結局、床のタオルとかにつかえて野垂れ死するんですよ。

残間 うん。

大垣 確かに、道走ってるより難しいのかもね。

古田 難しい。だから、みんな今は、ロボット掃除機に掃除させる前に前処理で掃除するんですよ。

大垣 なるほどね。

残間 結局、全部どこかで止まってるんだよね、帰ると。ぶつかって。

古田 そう。で、僕のロボット掃除機は、知能があると、人に優しい。つまり、片付けなくても、どこに何が落ちているかを人工知能で見て、さらに、タオルやなんかがあるときには、あるいやラグやなんかがあるときには、体をモーターでググッと上げて乗り越えちゃう。

大垣 ああ。

古田 全部の床にあるものが。

大垣 これ、自分でディープラーニングみたいなことをするんですか。

古田 ディープラーニングしている。

大垣 じゃあ、最初にプログラミングしているように動くだけじゃなくて。そうすると、例えば大垣先生の、足の踏み場もないようなひどい部屋でも。

古田 いける。

大垣 だんだん学習してきて。

古田 いける。

大垣 このへんには本が落ちてるっていうのが分かるんですね。

掃除機を作るときに、古田さんが考えたこと

古田 実は、僕、これ、ロボット掃除機から始めたんですね。パナソニックさんの掃除機の。で、二つ考えたんです。まず一つ目が、多くの日本企業って、いつの間にか改良しかできなくなっている

大垣 それはあるよね。言っちゃ悪いけど、パナさんなんかその典型。それは答えにくいと思いますけど。

古田 実はそうだと思うんですよ。昔は、安くて良いものを作れば世界で戦えたんですけど、今はもうそれ、アジア諸外国が通ってきている。だから、本当は、誰も作らない高度な技術が入ったものを作らないといけないのに、みんな、昔は「10年後の我が社を」って松下幸之助も言ってたのに、最近は、「10年後は経営者じゃないし失敗したくない」とか「株価の上がり下がりが」。

大垣 みんなサラリーマンになっちゃった。

パナソニックからは、お金をもらわずにルーロを開発?!

残間 ねえ、聞いてる人って、どうして古田さんって、クライアントのことを言えるんだろうと思うでしょう。だけどクライアントじゃないんだよね。

古田 そう。

残間 お金もらってない。

古田 お金もらったら対等じゃないから。

残間 業者扱いされるから。私、思ったの。お金って、いらないことはない。お子さん二人いて。お嬢さん、可愛いお嬢さんがいるんだけど、1.3倍でいいって言ったのよね。1必要とすると、1.3ぐらいあればいいと。

古田 1.0は嫌だから。でも、倍はいらないねと思って。

残間 2倍は要らないと。

大垣 買うだけあればいいのよね。

古田 そうそう。

残間 さらにね、私は、言うと嫌がるかもしれないけど、14歳のときに、脊椎の難病にかかって、余命8年って宣告されたんだよね。

古田 されましたね。

残間 奇跡的に助かって。でも、3歳ぐらいからずっとロボットをやりたいと思っていて。それもすごいでしょう。

古田 僕、桐原書店っていうところが出してる高校生向けの英語の教科書、長文読解の。それの、一つが、僕の半生の物語だった。

鈴木 ええっ、そうなんですか。

古田 大学の現役の先生が載るのは異例中の異例らしいんですけど。

残間 もっと驚くよ。祖先が古田織部19代目だっけ。

古田 すみません。

残間 織部好みよ。

大垣 それで、へんちくりんなものが好きなのね。

古田 ちなみに、織部はお家断絶したんだけど、織部のお父さんの、お兄さんの家系が直系なの。いいんだけど。でも、僕は、本当に、いろんな外国ができないような、日本ならではのものを。

ロボットも人間も、心と体も全て一緒に動いている

大垣 本当ですよね。ロボットっていうと、機械的に動く部分と、考える部分ってあるじゃないですか。どっちが、古田さんの。

古田 僕のメインは、元々知能系なんですが、ただ、人間の体と同じ。心も体も全て一体で一つのもの。

大垣 なるほど。

古田 だから、動く部分と知能っていうのは、僕は、両輪のものだと思っている。人間もそうですよ。これは声を大にして言いたい。

ビッグデータだけがあっても、それを役立つ形で扱えなければ意味がない

大垣 AIって、よくよく考えてみると、ただひたすらビッグデータがあって、それをちゃんと処理をして動いていくっていう意味で、あとはそれをどれだけ速くやれるかとか、臨機応変にやれるかみたいな話になってきてません。

古田 先生、とっても良いところをついてくださいました。今までは、ビッグデータを元に、知能っていうか、知識を解析してきました。でも、これからは違うんですよ。多分、これから、伸びる会社、発展する技術。これはビッグデータじゃないんです。

大垣 なんなんだろう。

古田 ビッグデータってスタティックなんです。ビッグデータって、これからダイナミックになっていきます。日々、時々、刻々と変わるデータになる。

今は、単なる固定したデータを集めている。だから、これからは、センサー情報を使って、いかにデータを収集し、そのデータからデータマイニングして、データ会社。あとは、センサー情報と紐づくIOTの会社。このあたりが伸びます。

だから、大手の企業のデータを扱う会社も、一生懸命ロボット技術やセンサー技術を。

ロボット掃除機でやりたかったことは、データの収集

実はパナソニックのロボット掃除機って、二つやりたいことがあったっていうのはまさにそこで。一つは、先端的なもの。

もう一つは、ロボット掃除機って、家の中に入れる数少ないロボットものなんです。動き回れる。実は、ダイナミックなデータを家中で動き回って収集する。

すると、その家の全てがわかる。すると、何が起こるかっていうと、あのロボットは、実はソフトウェアを書いてる。老人が倒れている。あるいは、知らない人が入ろうとする。そういうセキュリティとか、人の健康とか人命を作るという機能にまで及ぶ。

そういうダイナミックなデータを収集するエージェントになるというのは、これからの家電の未来への一撃だと思って始めたんです。

大垣 なるほど。

古田 だから、これからは家電も、車メーカーも、ダイナミックなデータをいかに整備し、サービスに繋げるかっていうのが重要だから、車メーカーがだんだん電気自動車に移行してますよね。すると、もうだんだん、車メーカーから主戦場は家電メーカーが車を作る方向になってきてるんです。

残間 なるほどね。

古田 現に、テスラとか、その他もろもろはみんなそうです。だから、皆さんは、これから、家電関係と、データを収集する会社に注目すると伸びますよ。違う言い方をすると、車メーカーはちょっと危うい。

社会科学系のデータはセンサーで情報収集ができない

大垣 今度はこうやって出てきたものが、私の夢は、今、これで15年分で、10数万人分ぐらいの家賃が出てるんですよ。これを使って、今後50年間の家の価値を決めるっていうのを作った。

古田 おお、すごいな。

大垣 全然AIじゃないの。なんだけど、次出ていただきたいのは、社会科学系のデータっていうのは難しいんですよ。

古田 確かに。

大垣 センサーで取れないようなものなんだけど。

古田 その通り。

大垣 これが全然、ビッグデータって、多いだけで整備できてないわけ。

古田 それはもう、世の中にたくさんあるんだ。

大垣 あるだけって。いっぱい。

古田 それは、健康器具のメーカーもそうだし。だって、囲碁とか将棋は簡単にデータが作れる。日々の人間の行動って、データがもっとも取りにくい。だから、iPhoneなんかも、Mチップっていう、モーションチップを入れて、人の行動を取ろうとしたりするし、さっきのロボット掃除機もそう。これからはいかに、データから見えないものを取るかということなんです。

大垣 そうなんですよね。今度僕は、そうやって、価値っていう、モノじゃなくて。

古田 データをいかに価値にするか。

大垣 価値が分かるようなもの。

残間 一人で倉のなかでずっと計算してるんだよ、大垣さんは。

古田 でも、家って素晴らしいですよ。柱の傷は一昨年のっていうように、家は、人が最も長く付き合うものなんです。

大垣 そうです。

古田 かつて僕は、違う家のメーカーだけど、ある大阪の大手のメーカーと一緒に、家にいろんなバイタルセンサーを埋め込んで、人の健康状態を知らず知らずのうちに集め、健康診断をするAIシステムを。

鈴木 へえ。

大垣 (笑)。私はすみません、文化系なんで、そんな家嫌だなとか思っちゃうんだけど。

古田 妻に体重がバレるって怒られたけど。でもね、本当に家の価値って、住んでる人がどうかということまで分かるし、家を見れば、いろんなことが分かる。

大垣 今度一緒に何かやりましょう。私は金融技術研究所の所長で。

古田 いいですね。

20年後の「家」と「未来」を見るためのデータとは?

大垣 私の本当の夢は、要するに、20年しか所有しない所有権を作ることなんです。それをやろうと思うと、永遠にもつ所有権はお金を払いすぎるから。だから、20年しか所有しないでおこうと思うと、20年後にイグジットしないといけないでしょう。っていうことは、今買った瞬間に、20年後が確実に分かっていないといけない。

古田 なるほど。

大垣 それを今だいぶできていて。

古田 でも、予想はできそうだ。僕、サービスにつなげてほしい。いろんなデータを。

大垣 今、15年かかって、そのデータが、ようやく集まったわけ。それをやっていきたいなと思っていて。

技術者が技術って言ってるうちはダメですよ

古田 いいじゃないですか。僕、速く技術者から、技術を諦めさせて、サービスの方達に受け渡したい。技術者が技術って言ってるうちはダメですよ。

大垣 そう。

残間 よかったね、話が合って。時間がなくてみんな困ってるよ。

大垣 (笑)。そうか。

鈴木 この話、続きはぜひ。

古田 もう終わり? これから高齢者の話をしようと思ったのに。

残間 これから、また絶対、近々にお呼びしますよ。やっぱり、いいでしょう。古田さんは最高よって。

古田 技術者が技術なんて語ってちゃダメよ。はやくサービスに繋げようよ、先生。

大垣 そうなんです。

鈴木 次回また、続きをお願いします。未来ロボット技術研究センター所長、古田貴之さんでした。ありがとうございました。

一同 ありがとうございました。