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ミャンマー住宅開発インフラ銀行元COOの泉賢一さんに、ミャンマーの今を聞く

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金融・住宅のプロフェッショナルである大垣尚司(青山学院大学法科大学院教授)さんと、団塊世代のプロデューサー・残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。

このブログでは、ラジオを聞き逃した方や、放送内容をもう一度確認したい! という方のために、人気コーナー「大人ライフアカデミー」の内容全てを、文字に起こしてお届けしています。
2021年4月17日の放送は、ゲストをお呼びしてのスペシャル回。ミャンマー住宅開発インフラ銀行元COOの泉賢一さんに、ミャンマーの今を聞きました。

ミャンマーのニュースを見ない日はありませんが・・・ 

鈴木 早速ご紹介します。ミャンマー住宅開発インフラ銀行元COOの泉賢一さんです。よろしくお願いします。

泉 よろしくお願いします。

残間 聞いてても、毎日大変でしょう。

泉 そうですね。新聞に記事が載らない日はないほどなんですが。非常に悲しいことが起こっているんですけれども。

いろんな方がいろんなメディアで批判などを仰っていると思うんですが、私は今日は、金融の支援をしてきたものですから、そういう立場から見てどうだったのかという観点で触れさせていただければと思います。

泉さんとミャンマーの関わり

残間 泉さん、いつ帰ってきたんですか。

泉 実は去年の3月にコロナの対策で帰ってきたんですが、そろそろ戻れるかなあと思っていた矢先に、2月1日にクーデターが起こってしまいまして、当面見合わせという形になり、今はこちらで待機しています。

鈴木 初めてお聞きになる方もいらっしゃると思いますので、簡単に泉さんのプロフィールご紹介しますと。

太陽神戸三井銀行、現在の三井住友銀行に入校され、国内中小企業営業を中心にキャリアを重ねてきた中、2013年からミャンマー担当になられたということですね。

それまで海外経験はほとんどなく、英語もさほど得意ではなかったと仰っておられましたが、2014年、現地に単身赴任されてから、毎朝4時半起きで英語とミャンマー語を学んで、今は立派なトリリンガルになられたということなんですね。

パーソナリティ・大垣さんと泉さんの関係は?

残間 結局、大垣さんとの関係って。

大垣 僕が先に行って、環境整備をしたっていうんですかね。

残間 いいひとが見つかったとかっていうのは、泉さんでしょう。

大垣 そう。それで、私はずっとは行けないので、トップを日本人にっていうところまで交渉をして。それで、そうしたらたまたまいらっしゃって。

ミャンマーの歴史について。現状と過去の関わりは?

鈴木 語られないミャンマーについて、泉さんにお話をうかがっていきたいんですけれども。ミャンマーのまず、歴史から教えていただけると。

残間 つまり、どうしてこんなふうになっているのかっていうのは、そういうところですもんね。

泉 そうですね。表面的には、前回の総選挙でスーチーさん率いるNLDが圧勝したと。2回目の圧勝なんですが。これに、腹を立てたというか、反発をする国軍側が、クーデターを起こして政権をひっくり返したというふうにしか表面的には見えないのですが。

実は、ミャンマー民主化する以前から、もっとドロドロしたものがございまして。

すでに10年以上前から、布石となるようなものは生まれていたということなんですね。

10年前から存在していた、クーデターへの「布石」とは?

鈴木 生まれていたドロドロしたものっていうのは、どういったものなんですか。

泉 まず、今、メディアなんかで国軍側とNLD側、与党ですね。と、太いパイプを持つのは日本だけだというふうに言われておりますが。

これは、もともと第二次世界大戦が終わる前に、ミャンマーというのは、いろんなところと戦いをやってるんですが、最終的にイギリスの植民地となったことがあります。

で、そこから独立をするときに、実は、アウン・サン・スーチーさんのお父さんでいらっしゃいますアウン・サン将軍が、義勇軍を立ち上げて独立をしようという運動を起こしたのですが、そのときに助けたというか、一緒になって戦ったのが、実は日本国軍だったんですね。

残間 ふーん。

第二次世界大戦後、ミャンマーはふたたびイギリス支配へ

泉 というところからパイプがあるんですが。日本も第二次世界大戦で負けてしまいます。あんな負ける日本ではやっぱりダメだという機運が高まってきて、やっぱりイギリスに戻っちゃうんですね。それではダメだということで、もう一度独立をしようとするんですが、国軍の中でも色々と反感があって、残念ながらアウン・サン将軍が暗殺されてしまうという事件がありました。

残間 へえ。

62年のクーデターにより、ミャンマーの経済状況は悪化

泉 そこからずいぶん経ってるんですけど、不安定な情勢は変わらなくて、1962年にまた軍事クーデターというのが起こって、ネ・ウィンさんという将軍が、社会主義を。ビルマ式社会統治というんですが。そんなのを立ち上げたんです。

で、うまく行けばよかったんですが、そこで経済の政策が色々と失敗してしまいまして、もともとはミャンマーっていうのは東洋一豊かな国と言われた時期もあったんですが、このときぐらいから、東洋一貧しい国というふうになってしまいまして。

大垣 鉱物が減ってるんですよね。

泉 そうですね。天然ガスとかですね。

大垣 あとは宝石とかすごいですもんね。

泉 米もたくさん取れますし。日本も一時、ミャンマーから米を支援してもらっていたという時期もあるようです。

経済状況の悪化により、民主主義が勃発した

泉 で、恐ろしいインフレがそのときに起きて、民主運動が勃発して、そのときにリーダー格として頭角を表したのが、今のアウン・サン・スーチーさんということです。

ミャンマーを統治する大変さ

大垣 でもあれ、大変だと思いますよ。俺、行ったとき、ミャンマーって一つの国だと思ってたら、もう、少数民族の人が山のようにいるので。

泉 135以上の少数民族があると言われていて

残間 ええ、そんなに。

大垣 で、宗教も違うし。だから、でっかいでっかい国会議事堂とかあるじゃないですか。そこに行くと、各民族ごとの民族衣装を着たマネキンみたいなやつが、ドワーッと置いてある。あんだけまとめるの大変だよね。

絶対に法案が通過しない議会?! ミャンマー憲法の「足枷」

泉 そうですね。ミャンマーも2議院制になってまして。二院制になってまして。上院と下院で。

上院が、民族の代表者で集まる議会になっていまして。

下院というのが、一般の方というふうになっていますが、両方ともNLDが圧勝という形なんですけれども。

 

スーチーさんの前のトップっていうのが、テイン・セインさんという軍出身の大統領だったんですね。

この方が、非常に民主化への舵を切ったんですが、そのときに作った憲法が、もともと今の色々な混乱のもとになっているんですけれども、国会議員の議席に4分の1は軍に割り当てられるというふうに決まっているんです。

大垣 そうそう。自動的に軍の人だから、みんな言われていたよね。「何をやっても反対されるから、法律が通らないから全然できない」って言われるんですよ。

泉 そうですね。

鈴木 混乱の原因になってしまっていると。

泉 何か重要な問題を決めるときには、4分の3超の議決が必要。そうすると、与党プラス野党の人が全員と、軍から一人、造反者が出ないと、絶対に決まらないという構造になっていますね。

残間 決まらないよね。

大垣 そう。だから、何かあると、今は、法律は通せないから、みたいな。よく言われましたね。

泉 そう。スーチーさんが大統領になれないのも、4分の3の縛りにあっているというふうになっています。

鈴木 このあとも泉賢一さんにお話をうかがっていきます。

今回のクーデター、ズバリ何が原因?

鈴木 引き続き、ミャンマー住宅開発インフラ銀行元COOの泉賢一さんにお話を伺っていきます。

残間 泉さん、これって、どうしてこんなふうになっちゃったのかっていうのは、現地にいらして、実際に仕事をしていた方ならではのお話ってあると思うんですけど。どうしてなんでしょう。

泉 クーデターが起こる前は非常に平和な国で、経済活動も活発で、いろんな国際支援もうまくいっていたはずなんですが、実は、スーチーさんの政権になってから色々表に出ているんですけど、もともと土台を作られたのは、スーチーさんではなくて、その前のテイン・セインさんという軍出身の。

テイン・セインさんは評判が高かったけれども・・・

大垣 わりと評判高い人ですよね。

泉 私も個人的にはあの方が続投されたらもっといいだろうなと個人的には思っていたんですが。

実は民衆は、もう、アンチ軍になって、スーチーさんが選ばれたということなんですが。

 

もともとの政策はテイン・セインさんという方がなさったと。

第3位の方が、自分は大統領になれると思っていたと思うんですが、実は下院の議長で定められていますね。なかなか意思が通らなかったということがありました。そのへんから、いろんな嫉妬があったりとかで。

実は、第3位の方が、国軍なのに、スーチーさんのほうに協力をずっとやるもんだから、国軍からも色々疎まれて、ぐちゃぐちゃした時期があるんです。

第3位のトゥラシュエマンさんが、軍に造反し軟禁される

泉 最終的に、今ミャンマーっていうのは、選挙が、小選挙区というふうになっているので、選挙区から一人しか選ばれないんですね。一位の人しか選ばれない。

それを国軍側が、ちょっとこれでは不利なので、比例代表制にしようというような議案が出されたんですが、実はそれは否決されてしまいました。

その否決をされた、色々と網を張ったのが、実は第3位のトゥラシュエマンという方だったということで。彼は軟禁されてしまうんですね。

そういうことがあってグチャグチャして、憲法がなかなか改正することができなかったということで。

軍からの不正選挙の訴えや、クーデターの訴えに取り合わなかった与党

泉 今回の選挙で国民側が不正があると。どこかの他の国で聞いたような話なんですが。

不正があるので、もう一回ちゃんと調べて欲しいという要望を出したらしいんですが、NLD側、与党側は聞く耳を持たずということで、全く聞き入れてもらえなかった。

そのうちにクーデターのことを示唆し始めたんですが、それも無視されるというか、響かなかったというので、実際にやってしまったと。

国民からの抵抗は、軍にとっては誤算だった

残間 私たちは、ニュース映像で見ると、それにもかかわらず、命懸けで普通の人たちというか、国民の皆さんが、あるいは若者が、戦ってますよね。あの姿っていうのはすごいなと思って、ついそこに目がいってしまうんですが。あれは国軍からすると、当然そうだろうという予測のもとに

泉 残間さん、すごく勘がいいことをおっしゃると思うんですが、あれは誤算だったと思います。

残間 あんなにまでなるのは。

泉 昔は、あれが成功したんです。ですが、今回は状況が違います。若者のほうがメディアをよく使いますし、情報があるし、どこでもできるんですね。ですから、これは国軍側の大きな誤算だったと思います。

大垣 やっぱり、豊かになったから、もうみんな。

泉 知恵がついてる。

大垣 前はやっぱり、わあお代官様だ、みたいになっちゃったのかもしれないけど、今はもうみんな、「馬鹿か」って。一旦知っちゃった、民主化の。

残間 それはそれですごいことですよね。

ミャンマーはこれからどうなっていく?

残間 大垣さんなんかは、いろんなことを勘案して、これはどうなるっていうふうに。

大垣 難しいよね。でもやっぱり、きょうわざわざお願いしたのは、報道はしてるんだけど、今ぐらいの話もあんまりしないですよね。

でも、東側の、アジアのところで、やっぱりミャンマーぐらい日本に近くて、大事さもすごく大事で、関係を持ってるから程よく親密になれる国ってないんですよね。なのに、意外と全然知らないじゃない。

残間 私、大垣さんが行かなかったら全然知らなかった。

大垣 私も自分が行かなかったらあんまり知らなかったけど・・・(笑)。

残間 大垣さん、だから、いずれ私も連れて行ってもらおうとか、一緒に行こうねって。

大垣 本当にいいところなんですよね。

だから、そこはやっぱり、もうちょっと勉強して。

でも、だから、ヨーロッパなんかわりとどうでもいいっていうか、遠い世界の話だから、人を殺してとんでもねえとか言っても、いじめてやれみたいな、制裁だってなるんですけど。日本は、そこはもしかしたら、生ぬるいとか思われるかもしれないけど、政府的にはやっぱり、なかなか難しいと思うんですよね。同じことをしようと思っても。だから、そこは僕らも、もっとあそこの国を知ってあげて

泉 そうですね。

大垣 気持ちを一緒にしてあげられるだけでもだいぶ違ってくるんじゃないかな。

泉 おっしゃる通りだと思います。

今のミャンマーには、問題点もありますが・・・

残間 日本にいるミャンマーの人たちも、一生懸命、日本の人たちに、支援してって。

泉 ヘルプを求めてらっしゃいますけど。

ミャンマーが発展し始めたここ10年ちょっとぐらいで、やはりちょっと急ぎすぎたっていう部分があると思うんですね。各国のODA漬けになってまして。

これは笑い話にもならないんですが。私がODAの仕事をミャンマーの政府の人と話しているときに、ミスター泉、あなたは困ったことがあったらいつでも相談してくれと。分かりましたと言うんですけど、よく考えたらそれは逆だなあと思いながら。そういう感覚になっているのと。

法律が機能しない国

泉 あと、法律はあるんですが、それがちゃんと守られていない。

大垣 っていうか、あるって分かってる人すごい少ないんじゃない。

泉 そうですね。

大垣 ものすごい古い、インドの英語の法律だったり。

泉 100年前の法律とか。

大垣 私らは読めるんですけど、英語だから。普通の人は逆に読めないし。

泉 そうですね。

大垣 僕は、やっぱり、できることってそんなにないけど、理解をしてあげるといいなと思うんです。

私たちが法律を守れるのは、「誰もが法律を守るだろう」と信じられるから

泉 キチッと守れるような法律とか規則を、一緒になって考えてあげるということだと思うんですが、たとえば、我々が信号。信号を守るのはなぜだと思いますかと。赤だったら止まる、青だったら進む、これはなぜですか。

鈴木 安全のため。

泉 なぜ安全ですか。

鈴木 ルールがあるからです。

泉 なんでルールがあるんですか。

鈴木 えっと・・・。人が安全に暮らすためのルール。

泉 たとえば、青だったら進みますよね。それは、僕は、隣が赤じゃないです。青だったら隣の人はこないというふうに、隣の人を信じてるからなんですよ。信じなかったら、青でも怖くて行けないですね。最近僕、いけないです。というのは、自動運転の車とか。

残間 お年寄りの人が、アクセルとブレーキを。

泉 突っ込んでくるかもしれないので。やっぱり、他者を信頼する。法律があったら、法律を守る人がいると思うから守るでしょう。お金を貸して、契約書をまくじゃないですか。その通りに払ってたら絶対に取られないと思うから払うわけであって、契約書があって延滞もしてないのに、いきなり取り立てにくると。これがミャンマーなんですね。そういうのを解決するために一つ一つやっていたんですけど、色々ODAの手法はあると思うんですが、やっぱり個別に一つ一つやっていくっていうのがね。

大垣 早く、ネットだけでも繋がるようになると、僕らはネット系で勉強できるようにしてあげてねとか。

残間 国軍が遮断してるんでしょう。

大垣 今、遮断してる。まだ繋がらないの、やっぱり。

泉 ポツポツと繋がっています。

大垣 早く、それだけでも再建できるといいですよね。

鈴木 まだまだお話を伺いたいんですが・・・。

残間 きょうはなるほどっていうのがね。

鈴木 今まで聞けないお話をうかがうことができました。きょうは泉賢一さんにお越しいただきました。ありがとうございました。

泉 ありがとうございました。

大垣 ありがとうございました。

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