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残間さんの座右の書『在宅ひとり死のススメ』、著者の上野千鶴子さんをゲストに語ります

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金融・住宅のプロフェッショナルである大垣尚司(青山学院大学教授)さんと、フリープロデューサー・残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。

このブログでは、ラジオを聞き逃した方や、放送内容をもう一度確認したい! という方のために、人気コーナー「大人ライフアカデミー」の内容全てを、文字に起こしてお届けしています。
2021年5月1日の放送は、上野千鶴子さんをゲストをお呼びしてのスペシャル回。著作である『おひとりさまの老後』シリーズは、累計125万部のベストセラー。今年1月に発売された最新作『在宅ひとり死のススメ』も大きな反響を呼んでいます。

 

『在宅ひとり死のススメ』、大ヒット。残間さんも救われた?

鈴木 早速お呼びしましょう。上野千鶴子さんと電話がつながっています。上野さん。

上野 はい、こんにちは、よろしくお願いします。

大垣 お久しぶりです。

上野 ご無沙汰してます。

残間 御本も拝読しました。今もう、ベストセラーに。

大垣 今回、『在宅ひとり死のススメ』をお出しになって、これはぜひお話を聞かないとということでお願いをしたんですが。

残間 すぐ買いにいきました。

上野 ああ、ごめんなさい、お届けしなくて。

残間 いえいえ。あとは、少女たちの生き方の本もね。上野さんのおかげで、おひとり様っていう身分がとても保障されて、私も認じてますが。おひとり様ですって。

上野 ああ、それは大きい顔ができるようになりましたよね。

残間 上野さんのおかげですよね、これね。「私はおひとりさまなの」っていうのは、なんか、むしろかっこいいほうになってますもんね。

上野 (笑)。おかげさまで。

上野さんの研究とともに、社会が動いていく

大垣 そういう意味では、おひとりさまのあたりから、上野さんと同時進行的に時間が進んでいって、今度は在宅ひとり死っていう。順番にみんなが一緒に、上野さんと同じ体験をしていってる感じがしますよね。

残間 団塊の世代、上野さんの周辺にいっぱいいますしね。

上野 そうですね。介護保険が成人式を迎えて。21歳になったんですよ。

大垣 そうですね。

上野 介護保険とともに歩んできたっていう感じで。

大垣 すごい。

ポジティブな意味での「家で一人で死ぬ」こと

残間 勇気づけられている人、いっぱいいますよね。一人死、私も、孤独死っていうものに対しては、いつもコメントするときに「そう言わないでください」って。孤独かどうかは分かんないでしょうって、いつも突っかかってましたが。一人で死ぬっていうことについてもまたポジティブなイメージになりましたね、これで。

上野 そうなんです。言葉がないから勝手に作っちゃってね。こういうタイトルで本が売れるとは思わなかったですよ。最初の頃は、編集者に、タイトルが過激だからって。

大垣 そうなんですか?

上野 反対されたりして。

鈴木 そうなんですか。

上野 うん。でもこういうタイトルで本が出せるようになって本当によかったです。

大垣 なんか、逆説って言えば逆説なんですけど、正論ですよね、結構。

上野 ありがとうございます。言われてみたらっていう感じでしょう。

大垣 そうですよね。在宅良くないよねっていう言い方のほうがずっと普通だし。

上野 よくないじゃなくて、家族がいないと無理ですっていう。

「上野は国策協力者」?! 呉越同舟の「在宅ひとり死」

大垣 そうですよね。あともう一つは、厚労省は基本的にやってることはダメって言わないといけないみたいな空気があって。この、介護保険の話も、むしろこれが大切なものだっていう論調ってそんなに、ありそうでないですよね。

上野 いや、やっぱり、現場をちゃんと見ていたら大変な状況なんですが。それにしても、厚労省、在宅誘導してますんでね。おうちにどうぞいてください、おうちで死んでください、なぜならば、それが一番安上がりだからっていう。

大垣 そうですよね。

上野 不純な動機なんですが、お年寄りはそちらを望んでおられるのでね。私は、動機は違うけど、同じ方向を向くんだったら、呉越同舟で。上野は今国策協力者だと言われていますが(笑)。

大垣 そうなんだ。

介護保険はここ2〜3年で急速に育ってきた

残間 でも今、終わりにまでずっと一貫して、介護保険をみんなできちんと育てていかなきゃダメだっていうことをおっしゃっていて、これは本当にそうですよね。

上野 ぜひ言いたいのは、育てていかなきゃ以前に、育ったんですよ。私は、現場の進化をずっと見てきましたので。私が研究始めた頃には、おひとりさま無理ですよ、おうちで死ぬなんてって言われたのが、今、どうなったと思います?

ここ2〜3年、現場が急速に変わってね。外野のノイズが少なければ少ないほどやりやすいです。ご家族いらっしゃらなければ、ご本人の希望をちゃんと叶えられますって現場の方がおっしゃるようになったんです。

残間 なるほどね。

上野 だから、かえって、ご家族がいらっしゃるほうが、パニクったご家族から、最後は施設か病院に追いやられるかもしれない。

大垣 うーん。

最期はどこで迎えたい?

上野 お聞きしたいんですが、残間さんはお一人さまですけど、大垣さんはお一人さまじゃないのね。

大垣 私は、奥様が、先に逝かれたらお一人さまになるかもしれないけど。

残間 子供5人いても、一緒に暮らす気ないんだって。

大垣 それは全然ないですね。なんでだろう。

残間 昔あったじゃない。なかった?

上野 最期はどこで迎えるとか、考えておられる? それとも、考えてない?

大垣 そうですね、なんか、僕はやっぱり、祖母が20年ぐらい面倒みないといけない時期があって、そこがそれなりに重たかったっていうか、今も母も見てますけど、あれはやらないんだろうなっていう感じで、猫みたいな感じで、漠然と、おひとり様っていうか、自分が生き残ったら、なんだろう。

残間 でも、上野さん、きっと大垣さんは、自分が生き残ったらと思ってないんですよ。奥さんに看取られて。

鈴木 ああー(笑)。

大垣 そんなことないと思うけど(笑)。

上野 いや、その度にね、「そのために自分より若くて丈夫な妻をもらった」みたいなことを言う人いますから(笑)。

大垣 私、二つ上なので、どっちかって言うと私が看るぐらいかもなとも思ったりもしますけど。なんか、僕はどこか、お寺があるので。おじいちゃんの。庵かなんかに入ってしまいたいと思ったりもします(笑)。

上野 それは、男性の持つ、ソローの家みたいな妄想ですよ。

残間 そうか。

鈴木 (笑)。

大垣 小坊主さんがいるから見てもらえるんじゃないの。

上野 死ぬまでが長いんですって。

大垣 すみません(笑)。

上野 だから、介護認定を受けて、介護保険医療保険も受けて、訪問医師も、看護師も、介護職にも入っていただいて、支えていただいてゆっくり亡くなってくださいませ。

大垣 そうね。

鈴木 このあとも上野さんにお話を伺っていきます。よろしくお願いします。

同居と再婚、家の売却、施設入居は厳禁?!

鈴木 引き続き、上野千鶴子さんにお話をうかがいます。上野さん、よろしくお願いします。

上野 はい。

残間 上野さん、私の周辺の女の人たちも、大きい声では言わないけれど、内心はやっぱり子供から「一緒に暮らさない?」って言われる悪魔の囁きを待ってる人、結構いるんですよ。

上野 はい。あのね、面白いのはね、最近の週刊誌に、在宅ひとり親っていう言葉がちゃんと出て参りましてね。

残間 ええ。

上野 両親の片方が死に別れて一人になったとき、やってはいけないことリストが挙がっておりました。その中に、子供と同居する。それから、再婚する。家を売る。施設に入る。全部やってはいけないことに入っておりましたよ。

大垣 確かに。家を売るのは本当にそう思いますね。

上野 そうですね。移住・住みかえ支援機構の関係で(笑)。ですから、本当に、私が研究を始めてから、本当に10年ちょっとで、常識がこんなに180度変わっちゃったかと思って、びっくりしましたよ。

生命保険を、生きている間に受け取れれば・・・

大垣 そうですね。あと一つ、本の中で、最期の期間にどのぐらいお金がかかりますかということで、400万円と言うのが書いてらっしゃって。

上野 30万円から300万円の間。

大垣 ああ、そうですね。これを見ていて、実はこの状態の、日本人の、世帯の平均の終身生命保険の保有高っていうのが、ちょうど400万円ちょっとなんです。

上野 ああ、そうですか。

大垣 これって驚異的な数字で、全ての保有高の平均なので。そのぐらい非課税枠500万っていうのを、生保レディの方が、ローラー作戦のように売られた結果だと思うんですけど。今、死なないと貰えないんですけど、あとは、もう死にますっていう、死んだも同然になってもいただけるんですけど。

上野 (笑)。

大垣 いわゆるねんねんコロリ系の亡くなりかたをしていこうと思うと、実はこの最後のところで先にもらえないんですね。

上野 はい。

大垣 だから、こんなの本当にどこかのタイミングでお金にできればいいのにねって思うんですけど。

残間 使えるお金にね。

大垣 うん。生保業界は頑なにこれをやらせないんですよね。

高齢者は思ったよりもお金を持っている

上野 でも、高齢者の方って小金を貯めておられるので。

大垣 なるほど。

上野 同居の方で、相続人のない方が、遺して、国庫に召し上げられたお金、平均が600万円っていう恐ろしい統計がありますので。

鈴木 ええっ。

上野 使っていただいたらいいと思うんです。

現場の「在宅ひとり死」への経験値が上がってきている

上野 それで、別に、そんなにお金がいらないことも分かりましてね。

最近本当に、現場の方の経験値がどんどん上がってきて。

いや、介護保険が進化したというよりも、介護保険の担い手の経験値が非常に上がったので。

「上野さん、すごいです。僕、独居の看取り経験が増えたから、医療保険介護保険の本人1割負担だけでちゃんと看取りができる」って読者がおっしゃってくださいます。

大垣 なるほど。

上野 それどころか、すごいのがね。ナースが何をおっしゃるかって。死ぬのにドクターはいりません、ドクターは死亡診断書を書いていただくだけですって。

残間 確かに。

上野 看取りは私だけでできますと、ナースがおっしゃると、今度は介護職が、お看取りに医者もナースもいりません、私たちだけでできます、とおっしゃってくれるようになりましたよ。

大垣 なるほど。最初の子供が生まれたときに、なるほど、普通に生まれてくる子供に産科のお医者さんはいらないって思いましたけど。

鈴木 私も思いました。

上野 (笑)。

大垣 今後は逆が起こるんですね。

上野 昔はみんなそうですからね。おうちで、家族でですから。

大垣 なるほど。

介護保険ができる前の介護は大変だった

上野 さっきの、大垣さんのおばあちゃまの介護っていうのは、介護保険の前ですか。

大垣 そうですね。最期は、多少はいただけた時期がありますけれども。

上野 やっぱり、介護保険の前のご家族のご負担は大変だったと思います。

大垣 そうですね。はっきり言って、私が外資系に転職したときって、一番最大の理由ってそれだった気がします。

上野 介護のため。

大垣 銀行勤めてると、いくらでも貸してくれるんですけど、くれないんですよね。

上野 なるほどね。

大垣 このままだと破綻するなと思ったりしましたね。

上野 孫の人生を変えたんですね。

大垣 プラスだったから、おばあちゃんのおかげなんですけど(笑)。

子供に介護をしてもらうべき?

上野 そういう思いを自分がしたから、子供にも二度とさせたくないと思う方は多いけど、自分の子供にはもう期待できないと思うけど、私は、今度は、子供に面倒かけたくないと思う方をみると、「だってあなた、人生で一番エネルギーとお金と時間使ったのは何です? 子育てでしょう」と。

大垣 なるほど。

上野 だから、死ぬときにね。大垣さんは上手いことをおっしゃったね。ピンピンコロリじゃなくて、ねんねんコロリ。

少しぐらいは、背負える程度の負担は背負っていただいて、見送ったときに、ちゃんと看てよかったねっていうのとね。

それと、やっとこれで肩の荷が降りたねっていう開放感と、両方味わえるならやってくれたっていいじゃないと私は思うんです。

大垣 そうですね。意識がある間はやっぱり、私なんかは、子供と孫を比較すると分からんですけど、子供は何歳になっても子供なので。それが分からなくなるぐらいボケちゃったらどんどん見てくれたらいいと思いますけど、意識があるうちに見られてると、悪いねって言いそうでそれは嫌だなと思いますけどね。そんな感じ。

上野 いいじゃないですか、だって。

残間 悪いねって思わなくていいって。

大垣 そうなんだけど、それって頭で思ってるから。それがなくなった世代ぐらいからは捌けちゃうんじゃないですかね。

上野 それはやっぱり、おっさんだからです。

大垣 すいません(笑)。めんどくさい奴にはなりたくないですね。

親の介護、子供の側はどう思う?

上野 ひっくり返ってオムツ替えてもらう姿を、大人になった子供に見せて、こうやって人間は死んでいくんだよっていうのをお見せになったらいいと思いますよ。

大垣 まあね。よく、娘が最近そういうことを言ってきますね。

上野 あら、いいお嬢さんじゃない。

大垣 Slackでチャットとかしてると、「その姿ってパパがボケたときと似てるかもと思ったりする」とかがちょっときたりとか。

上野 素晴らしいお嬢さん。目を背けないとおっしゃってるわけじゃないですか。

大垣 そうなんだろうなとは思ってるんでしょうね。やり出したらめんどくさいなと思うんでしょうけどね。

残間 親のシモの世話とかは、嫌じゃなかったんですよ。

上野 おやりになったんだ。

残間 最初、どうなることかと思って、最初の瞬間を迎えるのは怖かったですけど、ある日突然、シャワーを浴びさせてたら、上からシャワーと一緒に別のものが降ってきて。私の頭に。それで、覚悟が決まりましたね。「あ、こんなもんなのか」と思って。そこからは全く平気になりました。

上野 いや、残間さん、よくおやりになりましたよ。

残間 いやいや。それは、「私のオムツもこうして替えてくれたんだな」っていうのが、結構実感としてそのとき感じましたね。

上野 うんこの量と質が違いますからね。

残間 まあね。

大垣 臭いも違うしね。

どこまで介護をするか、子供側の意思決定も大事

上野 オムツの交換は子供がしなくても、介護職の方が入っていただけるので。

大垣 なるほど。

上野 家族だから、家族が背負える程度のこととして。それから意思決定ですよね。大事なときの。

残間 確かに。

上野 それで責任を背負って、迷って決めるっていうぐらい、ちゃんとやれよと私は思っておりますわ。

自作の『おひとりさまの老後』は、要介護高齢者?

残間 上野さん、このあとまた、次に、私たちの人生に沿った新しい本も。

大垣 次はなんなんだろう。

残間 このあと何があるんですかね、一人で。

上野 私ね、「目指せ要介護高齢者」ですよ。だって、私まだ要介護認定受けてませんもん。

残間 そうですよね。

上野 だから、当事者じゃないんです。だから、当事者になったらね、ゆうたるでって。

大垣 そうですか(笑)。

鈴木 自作も楽しみにしております。

上野 はい、はい。

鈴木 現在、『在宅ひとり死のススメ』、文春新書から、税込定価880円で発売しています。

books.bunshun.jp

残間 ベストセラーですからね。

鈴木 ぜひ電子版も各書店サイトで好評販売中。書店でも手に取ってご覧ください。

残間 私は必読書だと思います。全部網羅されてるんで、とても説得力もあるし。かといって難しいこととして捉えないでいいんだなというふうにも。

上野 いや、残間さんにそう言ってもらうと嬉しいですよ。

残間 本当に参考になりましたし、座右の書として、晩年に向かって置いておこうと思っています。

上野 ありがとうございます。

残間 ありがとうございます。

鈴木 きょうは上野千鶴子さんに電話でお話をうかがいました。ありがとうございました。

上野 ありがとうございました。

大垣 またお願いします。

残間 お願いします。

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