日本人にとって、土地を持つこととは? 土地の相続登記義務付けから考える(リスナーメールのご紹介)
土地の相続登記義務付けって?
鈴木 聞いて得する、家とお金のお話。大垣さん、きょうは。
大垣 埼玉県戸田市の、ラジオネーム、なんて読むんだろうな。飛鳥って、奈良の飛鳥と、お金の銭にかって書いて、アストラゼネカのもじりかな。
鈴木 「飛鳥は銭か」さん。
大垣 男性の方から。最近、男性の方のメールが多いんですよね。55歳ということで。
土地の相続登記義務づけというのが盛んにニュースになっていますね。
所有者不明土地の面積が九州より広くなったというのも驚きです。
そんなに余ってるなら希望者に抽選で配ればいいと思うんですけど、そういうわけにもいかないんでしょうか。
ということなんですけどね。
残間 (笑)。
日本には長らく「所有権」の概念がなかった?
大垣 これ、根本的な問題があって。
もともと、土地の所有権って、日本の歴史を振り返ってみると、明治維新まではなかった考え方ですよね。もともと江戸時代って、みんな将軍のものだからね。
残間 イギリスと同じだよね、女王陛下の。
大垣 うん。それを、藩主に貸してるわけじゃないですけど、お前はそこでいいよって。
所有権だったら、改易とかって、勝手にサラリーマンみたいに入れ替えたりとかってできないはずですよね。
だから、原則全部将軍のものみたいな感じですよね。
イギリスと考え方が似ている? 封建主義の「土地」とは
大垣 モノを所有しているので、絶対的に俺のものっていう考えっていうのが、あんまり日本はもともとなくて。
王様が領主に分け与える土地のことをfeuといって。feudalismっていうのが封建主義ですよね。そのfeuからきたのがfeeっていう言葉で。
だから、”Fee Simple Absolute”って、絶対的っていうと所有権っぽいんですけど、そういう言葉しかないんですよ。だから、借りてる感じですよね。
だから、fee for lifeってあるんですよね。生きてる間だけ所有。
fee for nightとかっていうと、一旦限りがあるよと。
そうすると切れちゃうんで、そのさきはfuture interestっていって、それも所有権みたいなものなんですけど。
共有するときに、あなたと私で半分こずつじゃなくて、私がここから20年で、そこから向こうはあなたって共有するっていうのがあるんですよね、当然のように。
だから、どっちかっていうとそういうっぽい感覚で。所有権じゃなくて、年貢を払わないでいい状態ぐらいの感じで。
残間 なるほど。
大垣さんのおばあ様も「年貢」を受け取っていた
大垣 だから、うちのばあちゃんなんか、京都に出てきちゃったので、昔に、兵庫県に田んぼがあったんですけど、それを耕していただいていたんですけど、なけなしの土地代みたいなのをいただくんですね。
そのときに、それをおばあちゃんは最後まで年貢って言ってましたよね。
鈴木 えっ。
大垣 感覚的に、年貢を取る権利みたいなのが。
残間 年貢っていう文字がそうですもんね。
大垣 年の貢物を受け取ることができる権利が所有権だったみたいなので明治を超えて、そこから急に民法が来て、所有権っていうのがきちゃったと。
国有地が生まれた理由は?
大垣 実は、日本国の4分の1は国有地なんですけど、これって国が自分のためにせしめたわけじゃないんですよね。所有するようになってないところが、基本は国有地っていう考えで、国有地になってるんです。
で、今所有者不明の土地が増えてるのは、仏門するからですね。
残間 うん、うん。
大垣 相続税を払えなくなるとか、もういらないので土地を持っていってくださいということできちゃうんですよね。それが、持て余すというぐらいあったり。
残間 土地の、お金として価値のあるところは所有権で土地を売っても、すぐに誰かが買ってくれるけど、やっぱり、そうじゃないところはね。山間地とか。
相続税の手続きを行わないまま、所有者不明になることも
大垣 あとはもともと相続したときに相続税がかかったりするので。あれは、相続登記を入れ替えたときに引っかかるので、やらないんですよね。そうするともう、3代前ぐらいの名義になっているおうちとか。
相続登記は、どうして義務になった?
残間 この人、「飛鳥は銭か」さんの、相続登記義務っていうのは。
大垣 放置しちゃうと、誰のものか分からなくなるので。
もう一個は、もともと境界がよく分からなくて放ってあったりとか、そういうので、登記を見ても誰のものか分からないっていうのが、だいぶ前の人になってるんだけど、ゆかりの人が全然いないっていうのが増えてて。
これは国的にいうと、放置されるとお金がかかるっていう議論なんですけど。
土地を所有するってどういうこと?
大垣 ちょっと言いたいのは、もともとそんなに、皆さんが持ってる土地って、すごいものじゃないですよね。持ってても結局・・・。
残間 すごいものじゃないとか?
大垣 例えば、そこから年貢がもらえるなら知らないよ。でも、自分の家が建ってるだけでしょう。
で、死ぬのはおそらく、90ぐらいまで生きるわけでしょう。そしたら、それを相続させたら、子供は60でしょう。とっくに家を買ってますよね、自分の。
そうすると、結局、めんどくさいっていうことになりますよね。
残間 うん。
大垣 だから、本当に所有権なのかっていうとよく分からないところがあって。それよりも、上手に使って、迷惑をかけないように死んでいくっていう方向に制度を変えていくっていうほうがいいんじゃないかと。
不動産価値は幻想かもしれない
残間 という方向になってきてるの?
大垣 いや、私なんかはそれを思っているの。それで、借り上げとか、色々。今は違いますよ。やっぱり所有権は絶対って、それが。
残間 みんな、不動産価値って、すごくね。
大垣 長くなりすぎましたけど、やっぱり、幻想の部分が結構あるかもしれない、と思ったりして。
残間 土地持ちだ。みたいに。
大垣 はい。
鈴木 飛鳥は銭かさん、お分かりになりましたでしょうか。
残間 土地なんていらないな。
鈴木 確かに。
大垣 家賃を払わないといけないのはまずいでしょう。
残間 ううん。別にいい。
大垣 いや、だから(笑)。分かったよ。
鈴木 (笑)。
大垣 でも、ほとんどの人は、年貢を収めないといけない状態は嫌だと。
残間 ああ、そうね。
大垣 でも、それ以上に所有権って何かあるだろうか、というのは。
残間 にゃるほど。
鈴木 おとなライフ・アカデミー2021でした。