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『女性の品格』著者・昭和女子大学理事長、坂東眞理子さんをゲストにお迎えしました

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●オープニング
鈴木 きょうは、ゲストに、ベストセラー『女性の品格』の著者で、昭和女子大学理事長、坂東眞理子さんをお迎えします。残間さん、去年のwillbeアカデミーでトリを務められたということで。

残間 とても好評で。

坂東 ありがとうございます。とても嬉しい。

残間 でも、前から、男女の共同参画を、坂東さんが室長をおやりになっているときから、男女共同参画社会の委員をやっていたときから。

坂東 まだ若かりし頃から。

鈴木 今でもお若くて。きょうはたっぷりお話をうかがっていきます、よろしくお願いします。

●おとなの花道
鈴木 では、ご紹介しましょう。きょうのゲスト、坂東眞理子さんです。鮮やかな黄色のスーツをお召しになって。

坂東 よろしくお願いします。黄色が割と好きなんですよ。

鈴木 素敵な雰囲気で。

残間 いつもおしゃれ。

鈴木 そんな印象があります。坂東眞理子さんのプロフィール、改めてご紹介いたします。
1946年のお生まれ。東京大学卒業後、総理府に入府。その後、埼玉県副知事、ブリスベン総領事、初代内閣府男女共同参画局長などを歴任。2006年の『女性の品格』は300万部のベストセラーに。現在は昭和女子大学理事長をお務めでいらっしゃいます。    坂東眞理子さんです、よろしくお願いします。

残間 いつもにこやかでいらっしゃるけど、去年もお会いしたときに、年齢を経たら、とにかく機嫌良くいるのよっておっしゃったのが刻まれているんですけど、不機嫌になるのよね。

坂東 いや、不機嫌になるのよ。自然にしておくと不機嫌になるから、意識して。

大垣 そうかもね。

坂東 機嫌よくね。

大垣 私なんか、鼻から不機嫌だったから、もっと不機嫌になるかもね。

残間 『不機嫌な果実』とか、林真理子さんの小説もあったけどね。なんか、黙ってるとどんどん不機嫌になるのよ。

坂東 こんなことは今更言ってもしょうがないでしょう。

鈴木 そういう考え方が大事なんですね。

残間 でも、女性の品格も、今こそまさに、人の品格が問われる時代になってきていますよね、ますますね。

坂東 お金だけ儲けりゃいいってもんじゃないでしょう。

残間 本当、そうですね。だいぶそこで、日本人は明け渡したものがありますね。

大垣 ああいうものって、後から身につけられるんですかね。

残間 品格? あれって。

坂東 やっぱり、生まれつき品格のある人っていうのは逆にいなくて。

大垣 それはそうかも。

坂東 努力して作り上げるものだと思っています。

大垣 そうですか。その努力をしないといけないと思うっていうところが難しいんですよね。

坂東 そうですね。私はこれでいいの、ありのままでいいわって、私らしく生きていくわって言ってると、品格とかね、そういうのとは関係のない世界に。

大垣 あっ、俺だ(笑)。ヤバそう。

残間 この何年で、私らしくっていうのが、流行り言葉に。

坂東 ありのままにとかね。

残間 そうそう、そういう歌もあったけど。

大垣 迷惑かけちゃうんですよね、ありのままやってると。

坂東 それって本当に、立派な聖人君子。自然に振る舞ってても自然に立派な人ならそれでいいけれども、私たち凡人は自然に振る舞ってると、どんどん醜くなっていくし、人に迷惑をかけるし。

残間 私らしくとか、僕らしくとか、「らしく」って本当好きだね、日本人は。

大垣 そうですね。それが自己主張になっちゃうんですよね。最近は。

坂東 そうですね、私らしくっていうのは自己主張なんですよね。

残間 でも、反面、若い人なんかは、承認欲求っていうか、人に認められたいとかっていう欲求も、学校で、若い方達を見ていて。まあ、昭和女子大って、品格のあるお嬢さんっていうか、ちゃんとした方が多いですね。

坂東 とてもいい子が多いんですけれどもね、高校を出る前に、「私は秀才ではない」「私はバリバリやる女性ではない」「フェミニストではない」「私は普通の女性だ」っていうふうに思い込んでる子が多いので、そこの思い込みをいかにして解き放つか。

大垣 そうか。

残間 女子大っていう空間に行く人は、なんとなくそんなふうに思い込まされて。

坂東 思い込まされてきている。それは大いに。

大垣 うちは共学だけど、それはありますね。僕なんか、そんなの全然ないんだと思ってたら、違うんですよね。

坂東 十二単とまではいかないけれどもね、五つ六つ重ねてますよ。ですから、アンコンシャス・バイアスっていうのは、森さんのようなおじさま・おじいさまだけじゃなくて、女性自身がアンコンシャス・バイアスに取り囲まれてるっていうか。「私は女なんだから、どうせ」とか「今更」とか、そういう言葉で、逃げちゃうんですよね。

残間 坂東さんはそういう中でも、少しでもそれぞれの人たちの、男女に限らず、特に女の人に対して理解が深くて、その人に内在している能力を出そうっていうような、制度も作る場所にもいらしたわけだけど。なかなかそこは日本って結構難しかったですよね、男女共同参画にしてもね。

坂東 いまだにまだバッシングですから、広報の中でも、むしろアンチ女性のことを言う女性のほうが人気があるというような。これは、いろいろなところで。「私は普通の女性とは違って、男性の気持ちがよく分かります」っていう人のほうが人気があるんですよね。

大垣 難しいところですね、それはね。

残間 だから、一生懸命「決定権のある場に女性を持っていきましょう」とか色んなことを言うんだけど、女性のほうが向いてないと自分で思い込んでたり、責任を負うには自分は能力がないと思ったり。

坂東 思い込んでるのね。それは、いつも私が言うのは、能力って色んな能力があって、学校で試験に強いっていうのは、もちろんそれも一つの能力だけど、それ以外に色んな能力があって、あなたの場合は別の能力を持っていることを発見して、それを発揮してと。それも、自分のために発揮するんじゃなしに、もっと困っている人とかに、色々課題の中で、のたうっている人もいっぱいいるわけだけど、そういう人を少しでも助けるように自分のできることをやったら、自分に対する評価も上がるんじゃないかって言ってるんですけどね。

残間 ずいぶん外側から見ると、変わったかに思っている方は多いみたいですけど、根っこのところではあんまり変わってないですよね。

坂東 そうなんです。

大垣 そういう意味では、コロナのときに、だいぶ、これまでの、大学生なんかの選択肢って、やっぱり男と同じように、会社入るしかないみたいなところがあって、そうすると結局、同じところに入ってくることになっちゃうんだけど。今は。

坂東 変わってきてるんですけどね、本当は。

大垣 変わってきているように思うんですよね。だから、僕らは学生なんかには、同じところに行ったら、やっぱり男は群れるし、しがらむし、そんなところに入っていったって、結局なかなかうまくいかないこともあるから、でも、こんなに色んな可能性が出てきているんだから、あんまり囚われずにやっていると、意外と力は、絶対みんな自力はあるんだからって言ってあるんですけどね。

坂東 そうなんです。20世紀というか、昭和の、高度経済成長までの日本の組織っていうのは、男の人たちが活躍しやすいような仕組みの、色んな形でサポートを作り上げてきたわけだけれど、今それはガラガラと崩れ落ちてるんですけどね。

大垣 いいことかもしれませんね。

坂東 男の人は大変だと思いますけどね。

大垣 男はね。それはそれで。

鈴木 (笑)。このあとも坂東眞理子さんにお話を伺っていきます。

●大人の一曲
鈴木 ここで音楽を挟みたいと思います。きょうは第一週なので、大垣さんの。

大垣 きょうはミュージカルから。屋根の上のバイオリン弾きって日本でも有名なんですけど、その中に、「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」って。普通は、サンライズサンセットが有名なんですけど、そのあとのほうで。娘が駆け落ちみたいにして出ていくときに、認めてやろうよってテヴィエっていうのが言うんですけど、そのあとに、「お前は俺を愛してるかい? ドゥーユーラブミー?」って聞くんですけど、「何を馬鹿なことを言っているんだ、考えたこともないわ」っていうところから、最後のほうで、色々言って、最後に「ドゥー・ユー・ラブ・ミー?」って聞くと、「アイ・サポーズ・アイー・ドゥー」って言うんですよ。

鈴木 ええっ。


坂東 (笑)。

大垣 このサポーズっていうのが独特で、「そんなとこかしら」っていう感じで、答えて、25年やってみて、そんなことに気付くのもいいもんだねって気づいて終わるっていうところが、日本は歌になってなくて、よく分からないんですが、とてもいい曲なので。分かりやすい英語ですので。

鈴木 ゼロ・モステル    「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」。

〜♪〜

鈴木 ゼロ・モステル    「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」、お聞きいただきました。

●おとなライフ・アカデミー2021
鈴木 引き続き、坂東眞理子さんにお話を伺っていきます。

大垣 私、ちょうど学者にさせていただいたとき、20年ぐらい前なんですけど、東京で社会人向けのコースを持つっていうことになって。立命館だったもんですから、場所がなくて。それで、実は、昭和女子大さんと関係があるということで。

坂東 立命館、そうです。

大垣 入ったところの右側に、社会人教育棟っていうのがありますよね。

坂東 そうです、そうです。

大垣 ここをお借りしまして、2年ぐらい。社会人の教育をさせていただいて。

坂東 ご縁が多いんですね。

大垣 そうなんです。でも、男が多いんですよね、私の講義だから、金融だから。トイレの数が少なくて。

鈴木 女子大だから。

大垣 男がずらっと並んでいるから、とても面白い現象が起きてたんですけど。やっぱり、私は、先程若い方のお話になったんですけれども、これから、お年を召した方、あるいはミドルのあたりが今度は。

残間 リカレント教育とかね。

坂東 本当に来て欲しいです。OECD、先進国の中では、日本の大人が一番勉強していないんです。

鈴木 ええっ。

坂東 日本って、大学は、18から22、23ぐらいまでの若者の場っていう感覚でしょう。アメリカもそうですけど、特にヨーロッパは、30代、40代、場合によっては5、60代でも大学で勉強する。ヨーロッパの場合は授業料が安いからなんですけれど。アメリカはちょっと高いですからね。日本はその中間ぐらいなんですけど、やっぱり、もう、ほとんど世の中が変わってきているし、新しいことをどんどん覚えなきゃいけないから、勉強しなきゃついていけないんですよ。私らしくやってちゃダメなんですよ。

残間 昔の「私らしく」じゃね。でも、大学院なんかは、かなり社会人を、最近は入れたがっていますよね。経営上もそうなんでしょうけど。

大垣 でもね。

坂東 今まで日本の大学院っていうのは、研究者を育てるっていうのがメインだったんです。普通の研究者としてやっていけるように論文が書けるように、修士論文を書いて、博士論文を書いてっていうようなトレーニングだったんですけど、今は大学院で勉強するべきは、研究者になるための方法じゃなくて、社会人としてきちんとした見識、スキルを持つ。新しいスキルを持つ。大人の学びの目的が変わってきてるんじゃないか。大学院が変わらなければならなくなってきてるんですね。

残間 まだ、そういうのに付いていけてない大学もあるけど、大垣さんのところは結構。

大垣 やろうと思って、やるんだけれども、やっぱり、ものすごいギャップがあるんですよ。子供を教えるということに特化している先生方が多くて。

残間 ああ。

大垣 結局、外から連れてきてください、みたいなことになると、置屋さんみたいな仕事になっちゃって。そんなはずはないと。実際、社会人の方に教えてみると、学生を教えるのとはわけが違うんです。ちょっと間違えたことを言うと確実にバレちゃうんです。

坂東 そうなんです。教え方が下手だとか言われるしね。

大垣 そうなんです。ですから、非常に厳しい場所なんです。ですから、先生方は大してやりたくないわけ。さらに、やっても授業カウントされないと。ちょっと技術的な問題で。サービス残業みたいになっちゃうところもあってね。とっても、大きく変えないとなかなか変わらない。

坂東 大きく変えたんですよ。今年の4月から、新しく、福祉共創コースっていうところなんです。ひらたく言うと、たとえば福祉施設の経営、マネジメントを勉強しようと。

大垣 それは大事だ。

坂東 実は、女性は、保育士さん、98パーセント女性ですし、介護に携わっている人も女性が多いんですけれども、だいたいみんな、いかに子供を育てるか、どういう風に読み聞かせをしよう、子供の心理をどうしようっていうふうに、専門職なんだけれど、組織をマネジメントするっていう、色々な考え方をする人たちが、チームワークをうまく発揮するにはどうすればいいかっていうことを勉強していらっしゃらないので、たとえば保育士さんたちは、とても離職率が高いんです。その一番大きなのは、仕事が厳しいからとか、お給料が安いからとかじゃなしに、職場の人間関係なんです。

残間 ああ、そうですね。悩みとして多いみたいですね。

坂東 そういったことっていうのは、マネジメント、チームワークをどうするかっていうようなことをもう一度勉強してもらったらっていうので。そういう社会人向けの大学院を作ったんです。

残間 社会人が社会人として生きていくときのスキルを欲しいんだけど、相変わらずやっぱり源氏物語講座みたいなのだと。

大垣 ああ、そうなんですよ。難しいよね。文化講座をやらないといけない、みたいな雰囲気もあって。今のお話ですと、私、サ高住の借り上げをフォローさせていただくんですけど、やっぱり、ある程度介護をやられて、ちょっと独立なさろうと思ったあとのお金の計算ができなくて、それで結局、ものすごく大雑把に、領収書を貯めると税金が安くなるんじゃないかとか、そんなことだけ聞いてこられているから、やっぱり最初から教えて差し上げないといけなくて、実際は、広い知識が必要で。

坂東 本当は、教養っていうのは、源氏物語ももちろん教養だし、歴史も教養だし、そちらの文化的教養の他に、社会的教養っていうのかしら。個人情報はどう取り扱うかとかね、税金とか、社会保険料をどうするかとかね。そういったような教養が、これから大人の人たちがどんどん身につけていかないといけない。

残間 今を生きている上で必要な教養よね。

鈴木 すぐに生かせそうですよね。

坂東 今はとにかく、世の中が変わっているでしょう。デジタル・リテラシーというか。スマホをきちんと扱えるかどうかで、社会生活の質が変わってくるっていうような時代ですから。私、とても親指じゃ入力できない。

大垣 ちょっと別の技術ですけどね。

残間 坂東さん自身が色々心がけていることは、ご自身はあるんですか。時代の流れとか、波の捉え方とか。

坂東 そうですね・・・。心がけてるっていうよりも、知らないことを知ろうとするというか。「へっ? どうして?」っていうのは、割と、歳をとってから新しい知らないことが増えているなという感じがするので、それをそのままにしておかないようにしようというのと、もう一つは、私、食べるのが好きなので、そのままにしておくとムクムクムクと太っていくので、できるだけ運動しなければいけないと。例えば、自宅から職場は2キロちょっとなんですけど、できるだけ毎日歩いているんです。特にこのコロナで運動不足なので。

残間 克己心がおありになるからね。決めるとおやりになりますもんね。

坂東 でも、雨が降ったらやーめた、とかね(笑)。

鈴木 それは臨機応変にね。

坂東 はい(笑)。

鈴木 まだまだお話を伺いたいんですけど、お時間になってしまいました。

残間 まだ是非おいでいただきたいですね、いろんな話をうかがいたい。

鈴木 きょうはベストセラー『女性の品格』の著者で、昭和女子大学理事長、坂東眞理子さんをお招きしました。ありがとうございました。

一同 ありがとうございました。
(了)