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MCJ(日本住宅ローン株式会社)の代表執行役・安藤直広さんに、住宅ローンの未来を問う

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鈴木 では、ご紹介しましょう。きょうのゲスト、安藤直広さんです、よろしくお願い申し上げます。

安藤 よろしくお願いします。

鈴木 安藤直広さんのプロフィールをご紹介します。

1966年生まれ。1989年に日本興業銀行に入行。
その後、メリルリンチ日本証券株式会社、投資銀行部門債券資本市場部ディレクターを経て、2006年、個人向け住宅ローン専門の金融機関である日本住宅ローン株式会社(MCJ)代表執行役就任。

大垣さんが直接ご指導されたという間柄なんですね。

大垣 入ってきた時からね。

安藤 そうですね。

大垣 あのときはめちゃくちゃな状態だったもんね。残間さんは、いつも私が怖いとか言うけど、10倍ぐらい怖い人だったよな。

安藤 そうですね、さらに怖い人もいらっしゃいましたね。

残間 誰?

大垣 僕らの課長。

残間 ああ、本当。

大垣 1日中緊張してる感じだったんだよね。

安藤 そうですね。私は、右隣にその怖い方がいらっしゃって、左隣に大垣さんがいらっしゃって、ずっと挟まれてやってました(笑)。

大垣 イラクの石油開発かなんかの融資とかっていうのをやっていたような、15年ぐらいの方と、私も留学帰りでしょう。だから、本当は新人が入ってくるようなところじゃないんですよね。そういう中で、かなりギスギスやっているところに「何、新人が来る?!」って(笑)。「大学生がくるのか」みたいな感じだったんですよ。どう思った? 最初の1日目。

安藤 いや、ちょっと間違えたかなって(笑)。

残間 言ったんでしょう、何か。

大垣 こっちも怒られないように必死でやってるわけ。3秒ルールとかあったよな。

安藤 そうですね。

残間 何、それ。

大垣 すごいできる上司がいて、その人はずっと考えてるんですよ。それで、分からなくなると急にその部分だけを聞いてくるんです。分からないじゃないですか。一応、時間稼ぎに聞き返すじゃないですか。そうすると、「復唱するな」って怒られるんです。

残間 軍隊みたい。

大垣 それで、ゴチャゴチャ言ってると、「3秒で答えろ」とかって言われて。

残間 3秒ルール

安藤 そうですね、3秒黙ってると怒られる。

鈴木 ええっ。

大垣 だから、とりあえず「大丈夫です」とかって必死で。ダメだったら命懸けで帰るみたいな。

残間 安藤さんが代表執行役の日本住宅ローン株式会社っていうのは、大垣さんが作ったんだ。

大垣 そう。住宅金融公庫っていうのを、今の住宅金融支援機構に変えたんですけど。長い話になりますけど、そこの仕組みを作るのをお手伝いとかしたりして。でも、当時は、結構、銀行から総スカンだったんですよね。住宅金融公庫っていうのが、住宅ローンを独占していたから。それで、新しくしてもあんまり銀行がフォローしてくれないんじゃないかっていう心配もあって。それで、私が留学している、80年代の中盤ぐらいに、社長をやられているところも含めて、モーゲージバンクっていう、公的なところの住宅ローンを貸して、そこへ渡しますっていう機関ができていたんですけど。それを日本でも作ったらっていうことで作ったんですよね。

残間 MCJっていうんでしょう。

大垣 Mortgage Company of  Japan。

安藤 Mortgage Corporation of Japanですね。

大垣 最初、Mortgage Bank of Japanにしようと思ったら、Bankという言葉はいかがなものかって言われて。当時安藤さんは、メリルリンチにいらしたんですか。

安藤 メリルリンチにいましたね。

残間 そうか、いろいろなところにいらしてるんだものね。

安藤 ええ、そうですね。メリルリンチにいたときに、大垣さんから社長をやらないかとお声がけいただいて。

大垣 インベストメントバンクの、ピカピカのところだったから、本当に来ていただけるかどうかは分からなかったんですけれども。

残間 今、180人ぐらいいるんでしょう。

安藤 そうですね、180人ぐらいいますね。

残間 大垣さん「しまった損をした」と思っているでしょう。渡さなければよかったと。

大垣 そう。だって、始めた時6人だもん。それで、会議室みたいなところで。その前は、企画をやってるときは一人だったんですね。パソコンを持って、まさにリュックの中に入れて、出資者になってくださる会社の一つの部屋をお借りして。

残間 いつものようにやっていたのね、一人で。

大垣 でも、実は会社にはあんまり行ってなかったんですけどね。「最近パパは会社に行かないね」っていう状態が半年ぐらい続いていて。それで作ったんですけどね。だから、180人かあ。私が社長を辞めたときで、何人ぐらい。

安藤 その時は、60人ぐらいですね。

大垣 3倍なんて、すごいね。

残間 180人に社長って呼ばれたら、気持ちよかったよね、大垣さんも。

大垣 全然。なんか社長って面白くない・・・って言ったら怒られる(笑)。

残間 でも、楽しそうに社長をやってらっしゃる。

鈴木 ね。社歌もYouTubeで。

大垣 社歌作ったんだね。

残間 私、聞いちゃった。昭和の青春ドラマみたいだった。今の若い子って、懐かしむようで。

安藤 結構喜んでもらえるんですよね。

大垣 そうなんだ。

残間 「愛を住宅ローンで届けよう」っていう歌詞があるんだよ。「愛をいろんなローンで届けよう」っていうのもあるんだよ。

安藤 このへんの作詞作曲も社員がやって。

残間 動画も、いろんな社員が入れ替わり立ち代わり出てきてね。

安藤 社員が全員参加的な感じで。

残間 あれ。社歌コンクールに出したでしょう。

安藤 はい、コンクールに出しました。

残間 日経新聞のね。そういうのに出して。楽しそうだよ、部活みたいで。

大垣 だって、僕らの頃は新人がいないもんね。

安藤 そうですね。

残間 若い人がいっぱいいましたね。

安藤 今は、年間10人ぐらいの新卒の方に来ていただいて。

大垣 私のゼミの子も、採用していただいたりして。

残間 そうなんだ。みんな楽しそう、すごく。

鈴木 このあとも、安藤さんにお話をうかがっていきますが、ここで1曲お届けしましょう。

〜♪〜

鈴木 引き続き、安藤直広さんにお話を伺っていきます。よろしくお願いします。

安藤 よろしくお願いします。

大垣 そういう意味では、安藤さんは、私がとにかく変なことばっかりを考えてね。

安藤 10年先をいつも行かれていると言いますか。

大垣 10年先っていうのがすごく意味深で、5年先だとちゃんと儲かるんだけど、10年先っていうのは、分からないっていう。そのあと、いつも、安藤さんがキチッと形にしてくださっていて。

残間 大垣さんも我欲のない人だからね。

大垣 我欲がないっていうか。

残間 だから、引き受けてくださる方も、そうだよね。

大垣 だから、今も、実は、また引っ掻き回しているんです、私が。それが、この間からお話ししている、例の、残価設定型住宅ローン。安藤さんのところが、日本で初めて残価設定型住宅ローンを、これから。

安藤 そうですね。これから頑張りたいと思います。やっぱり大垣さんがずっと取り組んでいらっしゃる残価設定型住宅ローンはすごくいいと思っていますし。将来の不安が非常になくなる、シニア向けでもあるし、若い方向けでも、ある意味ではあると思うんですけれども。そういったローンは、これからの時代に非常に大切だなと思います。

あと、大垣さんがずっと取り組んで、作られた技術ですね。目に見えない裏側なんですけど、そこは、誰も追随できないなと思っていますので、先駆けて取り組みたいなと思っています。

残間 やっぱり、こういう仕組みがあると違いますよね、広がり方が。

大垣 安藤さんのところがやられている住宅ローンは、全部、株主が、大手の住宅メーカーで。

安藤 そうですね。

大垣 非常にいい住宅だから、逆に今の残価設定型ローンは、自動車もそうですが、長く住んでいても、価値がたくさん残っているわけですね。だから、その価値を上手に使えば、安心して借りられるようになるんだから。

今、住宅ローンって、家を見ないじゃないですか。メーカー住宅だろうが、大垣工務店だろうが。そういうのを差別化していくと。

それから、もう一つは、SDGs。環境にいいようなものはどうしても高くなりますからね。そういうものが無理せずに買えるようにって。ということを、安藤さんに私がずっと言って(笑)。

残間 でも、大垣さんが残価設定型住宅ローンを思いついたのは何年ぐらい前なの。

大垣 15、6年ぐらい前。

安藤 そうですね、それぐらい前になるんですね。

残間 その頃から聞かされているわけでしょう、安藤さん。

安藤 そうですね、聞いています。

大垣 要するに、普通のローンしかないから。日本住宅ローン株式会社の社長になったのはいいんだけど、普通のローンしかないのが許せない、みたいになるんだけど、新しいものを作ろうと思うと、「それはご自分でやられたら」って言われちゃうわけ。じゃあ作るって。最初は、MCJの会議室を借りて準備していたんですけどね。それで移住・住みかえ支援機構を作っていただいて。

残間 長いよね。

大垣 2、3年でできる予定だったんだよ。いつもそうだよな。

残間 結果、何年もかかると。

大垣 15年。

残間 15年かあ。

大垣 でも、ちょっとしつこいんだよね。

残間 着手したら最後までやり遂げるっていうのは大事だよね。

大垣 でも、どう? 社長。だいぶになるよね。

安藤 わたしも、15、6年になるんですよね。39歳からやっていますから。

大垣 私が辞めた時から社長になったから。へえ。

残間 社会貢献活動とか、CSRもやっているのよね。

安藤 そうですね。

残間 神田川を綺麗にしたりとか。

安藤 社会の役に立ちたいっていうことが、我々の一番の社是だっていうことで、やっています。そのへんは大垣さんイズムを引き継いでやっているんですけど。

残間 アルツハイマー病への基礎研究に対しても寄付を。

安藤 寄付をしています。社員の皆さんも、社会貢献しているMCJっていうことで入ってきている方が非常に多い。

残間 最近、そうみたいですね、若い方も。自分だけよければいいとか、お金が高いからっていうのじゃなくて、会社の品格が問われていますよね。

安藤 そういう時代なのかなと思っています。

大垣 すごいよね、私のときは赤字だったんだもんね。

安藤 そうですね。確か、私が初めてきた年は、何百万の利益がやっと黒字になったとかって喜んでいましたから。

残間 大垣さん、だいたいそういうところなんだよね。

大垣 立ち上げた最初の月、3件か4件ぐらいしか来なかったんだよね。今は、1000件ぐらいくるんでしょう。

安藤 それぐらいはきますね。

大垣 どうしよう、とかって思って。すごいよね。もう、ものすごい黒字になって。盤石の。

安藤 そうですね、10億、20億ぐらいの黒字。逆に、利益をコントロールして、利益を出る分はお客様に還元しようということだったり、あるいは、新しい開発に活かそうということでやっていますので。

残間 住宅ローンの月々の返済額の一部を寄付金にして積み立てて、青パトっていうんですか。福祉車両に。

安藤 そうですね、色々な貢献をしているっていうところが我々の会社の本質だっていうところで。その中で、残価設定型住宅ローンもまさに、社会の役に立つ商品だぞと。今、会社の中で大きなプロジェクトとして取り組んでいる形です。

残間 安藤さん、ずっとこういう畑で仕事をしていらっしゃるけど、若い頃も、社歌なんか見ると、そっちの方面とか、エンターテイニングとか、クリエイティブっていうほうに行きたいとは思わなかったの?

安藤 そこはあまり思わなかったですね。青臭いようですけど、日本の役に立ちたいとか、社会の役に立ちたいっていう。そこを思っていました。ただ、なんでも興味を持つほうなので、カラオケも好きなんですけど。歌も、年甲斐もなくって娘に言われますけど(笑)、結構新しい歌を歌うぞとかってやったりして、Official髭男dismとか、back numberとかを歌ったりもします。本当に娘からは「やめろ」って言われるんですけど(笑)。

色々興味を持って、少しでも色々な、世の中の役に立てるものがあったらどんどんやっていきたいっていう。

残間 そういう、若い人の歌なんていうのは、社会の一つの現象というか、一断面だから。やっぱり、味わっておくっていうのは大事ですよね。自分には関係ないんだって切り捨てないで。

安藤 そうだと思います。

鈴木 今後、会社をこういうふうにしていきたいとかっていう、夢はあるんですか。

安藤 まさに社会貢献ができる会社であり続けたいと思いますし、住宅ローンの分野では、よく大垣さんがおっしゃってますが、「人に融資するというより、家に融資する」っていう形になっていければと思います。

そうすることで、どんどん、賃貸と新築の差がなくなってくるといいますか。新築で好きな家に住むんだけど、気持ちでは家賃を払っているような感覚で、住み替えたいと思ったら、家も手放して、ローンからも解放される。そんなことが。

残間 自由になりますね。

安藤 ええ、自由にできるようになって。で、かつそれを、我々としては、スマホとか、今のデジタルトランスフォーメーション(DX)で。

大垣 すごいの作ったんだよね。

安藤 簡単に、ワンクリックに近いような形で借入手続きができちゃうようなものになればいいなと思って、今、取り組んでいます。そういうところに持っていければ、今の社会のお役に立てるかなと思って。

大垣 僕たちは、最初始めたときは、日本興業銀行って、企業に貸すだけの会社でしょう。だから、技術開発の先端にはいたんだけど、基本的に企業向けのものをずっと作ってきたんですね。その後ろで、一緒にいろんなことをやってたんですけど。

だから、それが、だんだんそういう時代から、意外と積み残されているのが、個人の人が同じような、ものすごくハイテクなことでうまくいくような仕組みがあるのかっていうと、案外住宅ローンって、おそらく、70、80年ぐらいは同じようなことをやっているだけ。

安藤 そうなんですよね。

大垣 だから、そこを、技術の中で。せっかく企業でやっていたときに培った技術があるので、それを今度は、普通の方の借り入れで研究して。

残間 それは、安藤さんのあとの世代の人たちにはつながっている? 大垣さんはそういう思いを抱いて、それを受け皿としてやってくれる安藤さんという人がいる。5、6歳違うんだっけ。

大垣 7歳違う。

安藤 そうですね。社内の若手が頑張ってくれています。

大垣 DNAを持っている人が、世の中にいて、いろんなところで動き出していて。

残間 皆さんも、日本住宅ローン株式会社のホームページをご覧になると、安藤さんは、あんまり社長らしくない感じで出ていて、いいですよ。

安藤 ありがとうございます。全くそこは、社長らしくないというか、みんなが身近に感じてもらえるような。

残間 褒め言葉。

安藤 席もオフィスの中に置いてますし、普通に、部屋の中じゃなくてオフィスに置いてますし。結構行列がなしてまして。相談事があまりにも多いと、信号を赤にするみたいなのを社員が思いついて。青になったら団子を作るみたいな。

大垣 すげえ、社長をやっているね。

安藤 ちょっと、あんまり垣根のない会社をやらせていただいているかなと思います。ありがたいことだなと思っています。

鈴木 きょうは大垣さんの可愛い後輩でもあります、日本住宅ローン株式会社、安藤直広さんにお越しいただきました。ありがとうございました。

一同 ありがとうございました。