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上野千鶴子さんと考える、ポストコロナの社会とは?

 

鈴木 それでは早速上野千鶴子さんに電話を繋ぎます。上野さん、よろしくお願いします。

 

上野 よろしくお願いします。

 

残間 上野さん、残間です、お久しぶりです。

 

上野 お久しぶり。

 

大垣 お元気ですか、大垣です。

 

残間 本当に元気そうですね。

 

上野 さっきの大垣さんの本の引用のところが、コロナの生活そのものですね、本当にね。

 

鈴木 確かにそうですね。

 

上野 きょう1日が始まって終わるという生活自体が仕事になるって、ちゃんとね、こんなに早くから言っておられたんだもの。

 

残間 大垣さん、なんでも早すぎて駄目なのよ。

 

一同 (笑)。

 

大垣 そうなの。みんなが思いついた頃には飽きちゃって、別の事始めている。

 

鈴木 上野千鶴子さん、改めましてなんですが、ごくごく簡単にプロフィールをご紹介させてください。社会学者でいらして、東京大学名誉教授、そして認定NPO法人ウィメンズアクションネットワークの理事長も務めていらっしゃいます。

 

上野 はいありがとう。

 

残間 私も一員として加えさせて頂いて。

 

上野 ありがとう。

 

残間 ところで、なんかこの間何かで読んでたら、コロナと関連があるのかもしれませんけど、これからは色んな時々、時代時代の中でいろんなことを行動としても言葉としても残されてますが、今は家で認知症になって一人暮らしの人たちがどうやってこれから送るかっていう、私もそれはの課題ですけれども。今その辺がの関心事の中にあるんですって?

 

上野 はい、明日は我が身ですから。大体やっぱり、私とか残間さんとか、口先でお仕事してた人は認知症になりやすい。

 

大垣 そうなんですか?

 

残間 本当?

 

上野 (笑)。

 

大垣 そうかなあ。

 

上野 なんとなくそんな気もします。

 

残間 耐えてる人がなるのかと思った、じっと。良妻賢母の雛形みたいな人が。

 

大垣 でも、よく出てくるアルツハイマー病の防御因子っていうのは知的活動運動と高等教育ってのが四つのうち二つですよね。

 

上野 申し訳ありませんが、今アルツハイマーについては、治療法も予防法も原因も分かっておりませんので、こうしたらならないっていうことは全く保証がありません。

 

大垣 そうなんだ。でも、これ、厚生省のとことかにいっぱい載ってますよね。

 

上野 それは、たんに相関ですからね。

 

大垣 なるほど。

 

上野 原因と結果じゃないですから分かりません。

 

大垣 そうすると、いつなっちゃうか分かんないんだ。

 

上野 そりゃ大垣さんだって分かんないですよ。私の目から見て、まさかこの人がっていう人がおなりになってますから。

 

大垣 でもね、うちおばあちゃんずっと100歳ぐらいまで介護して、最後の多分10年ぐらいはすごい状態だったような気がするけど、あれ、体と一緒に衰えていってるとそんなに感じないけど、認知症の方がやっぱり大変なのはおそらく体の方が大丈夫だからですよねきっと。

 

上野 そういう方もいらっしゃいますけど、どちらにしても加齢に伴う現象だから、もう、病気って言わないほうがいいって人もいますね。

 

鈴木 ああ。

 

大垣 それもまた厚生省の統計だけど、2番目のところだと、95歳で75パーセントになっちゃうわけでしょう、女性の方は。

 

上野 はい、年齢が高くなれば確率は高くなります。

 

大垣 そうですよね。こんなの、病気っていう比率じゃないですもんね。

 

上野 まあ、加齢現象ですね。

 

残間 上野さんと昔話した時に、上野さんが「ピンピンコロリ」という言葉が出てきたために非常に生きづらくなったと言うか、あれを目指して、それを目標にして、みんなが老後を送ろうとする人出てきたために、ピンピンコロリじゃなくて、病気をせざるを得ないような状況が出てきた時に、そういう人たちがすごく生きづらい時代になったって話をしてらっしゃいましたけど。今その辺についてはどう思ってらっしゃいます?

 

上野 よくぞ言ってくださった。だってね、寝たきりだってアルツハイマーだって、コロナだって、別に好きになるわけじゃないじゃないですか。それが、例えば運動してなかったからだとか、知的な作業をしてなかったからだとか、メタボになったからだって、それを言われちゃったらね、自己責任って言われちゃうでしょう。そんなこと、大垣さんだっていつそうなるかもしれない。

 

残間 私、上野さんがそうおっしゃってから、いろんなところで、僕の理想はピンピンコロリっていう、特に男の人多いんですよね。

 

上野 言うんですよ。

 

残間 必ずね、それが出てきてから、とってもみんな、やっぱり長患いする人なんかとても自分が悪いことしてるように思わせられて。「それ言わない方がいいですよ」って必ず嫌味な感じでたしなめることにしてるんですよ。

 

上野 それはとても教育的だと思います。だって、ご本人が寝たきりになったときに、散々っぱら「それは自分の節制が足りなかったんだ」とか言ってきたら、自分が辛いじゃないですか。

 

残間 本当ですよね。

 

上野 でも、私お年寄りと付き合ってるんでね、そういう方達が一日一日機嫌よく過ごしておられたら、それでいいじゃないかって、それを一日支える方達がおられて、コロナのもとでもそういう生活が成り立ってんだから、本当に良かったなと思います。

 

鈴木 このあともおお話を伺いますので引き続きお付き合いください、よろしくお願いします。

 

上野 はーい。

 

鈴木 それでは音楽のコーナーを挟んで、引き続き上野千鶴子さんに伺っていきます。続いては音楽のコーナー、大人の一曲です。

 

残間 きょうは、上野さんがゲストなので、あまりとんでもない曲を選んでは上野さんに嫌がられたらやだなと思って考えまして、小室等さんの『雨が空から降れば』、是非聞きたいなと思っております。

 

鈴木 小室等さん、『雨が空から降れば』。

 

  • 大人ライフアカデミー2020

 

鈴木 引き続き上野千鶴子さんと電話をつないで参ります、上野さんよろしくお願いします。

 

上野 はい。

 

大垣 僕、上野先生にぜひ聞いてみたいなと思っているのは、コロナで在宅がある種、無理やり普通になってきているじゃないですか。そうすると、どっちかっていうと男が面倒くさいことになると思っていて。家にいると確実に、本当は窓際であったってことがバレちゃうじゃないですか。

 

上野 (笑)。

 

大垣 それから職場にいるとポジションがあって、それから年功があるから基本的に何とかなっちゃってるのが、家の中では絶対にそういうことがないので、自分でやっぱり自分を主張しないといけなくなるんだけど、その時本当に自分を磨き出すかって言うとそうでもない人がいるとか。

 

残間 そんないきなり磨くって言ってもね。

 

大垣 無理ですよね。

 

残間 不要な男が増える。

 

大垣 でもやっぱり、私は男だから、割れ鍋に綴じ蓋とか知らないけど、破れ鍋の綴じ蓋だったっていうことになっちゃう女の人もいるわけですよね。

 

残間 夫婦なんだもん。

 

大垣 こいつ、破れ鍋だったんだなとか思っちゃうわけで。そうなってくると、ものすごくやっぱり実は本音ベースで「こうだったんだ」っていうことが起き出すような気がしていて。私はすごくウキウキしてんですけど。

 

上野 面白いですね。

 

大垣 どうなるんだろうか。

 

上野 コロナで夫婦が密着してるから、そのあとコロナ離婚が起きるだろうっていうのもありますね。

 

大垣 これは私、移住・住みかえ支援機構をやってますでしょう。すでに何軒かご相談を受けていて。

 

上野 そうですか。

 

大垣 やっぱり起きるんだ、とか思っちゃったりして。

 

上野 私も大垣さんに聞きたいのはね、先ほどの住み替えのアナウンスがありましたが、コロナのおかげで地方居住が見直されてんじゃないかなと思って。今、テレワークをご夫婦両方でやってるところおがあるでしょう。面白いのは、やっぱり、妻が悲鳴をあげているんでしょう。夫がいるだけで三食作らないといけなくて、昼ごはんを作る手間が増えたとかね。で、おまけに、テレワークも夫優先で、私が聞いて本当にびっくりしたのは、手がかかるから大変だ、と思ったのは一人になれる場所がないって言うんです。

 

大垣 そうですね。

 

上野 それで、やっぱり、夫のテレワークが優先で、妻は、私たちがZoomなんかでミーティングしてるでしょう。そうすると、子供の声がしたり、子供がチョロチョロ入ってきたり、私生活が見えるんです。

 

大垣 最初に起きたのは、これまで誰も入らなかった空き室ばっかのアパートが急にテレワークスペースになって埋まりだした。

 

上野 なるほどね。

 

大垣 これは、今流行りになりましたね。結局家じゃないんだってまず思った。

 

上野 思ったのは、そういう私生活が公的なミーティングの場に入ると、その人のバッグが分かって、発言がポロリと非常に●(00:09:09)になって面白いんです。

 

大垣 それはそうですね。

 

上野 それで、私感じてるんです。今、食住分離の生活を長い間日本人やってきたじゃないですか。また、食住一致に戻るんじゃないかって。

 

大垣 私もそれをすごく思っていて、二人で働くっていうか、家族で働くって単位が戻ってきてくれるといいなと思っていて。

 

上野 私は、テレワーク付きっていうよりも、ラボ機能付きって昔から言ってたんですけど、工房付きね。住宅が消費だけの場じゃなくて、仕事や生産の場にもなる。夫も妻も全員働く。そうしたら、夫が家で何もしないわけにはいかないですよね。

 

大垣 そうなんです。

 

上野 夫がどんなに無能かっていうのが分かってくる。

 

大垣 うちの、授業が全部。

 

残間 リモート。

 

大垣 リモートになりましたでしょう。

 

上野 そうか。

 

大垣 ゼミ生たちがマンダラみたいにいっぱい出てくるんですけど、その子たちに、お父さん今家で仕事してるだろうって言うと、うんって言うわけ。どうだい、仕事してる? って聞くと、いや、してないとかってみんなが言っていて。多分、私がちょうど大学に移った後に、家で主として仕事をするようになったとき、最初に感じたのが、職場だと必ず部下なので、相手が。そうすると、努力しないでも上下関係が作られてくれてるのですごく楽なんですけど、家に帰ると絶対に相手がレスペクトしてくれない限り動かないので、そこの追加的な負担がすごくあるなって感じたんですね。だいぶ前ですけど。

 

上野 それぐらい学べよと思いますけどね。

 

大垣 それを今ほとんどの人が感じてんじゃないかと思って。

 

残間 そうですね。

 

上野 家族として共同で作り上げようとしたら、両親も子供もそれぞれの役目を果たさないといけないと学ぶと思います。

 

大垣 そうなんです。なんか、みんなで学び直しているような。で、それが当たり前なると今度これが会社に戻っていくと面白いなと思って。

 

上野 会社に行かなきゃいけない理由がだんだんなくなるんじゃないの。

 

大垣 やっぱり、何十億って節約できるので、交通費が。

 

残間 そうか。

 

大垣 なので、どう見てもいいと思うんですね。それから中間管理職はやっぱり言っちゃ悪いけれども窓際っていうポジションがあって、でもこれってやっぱり家賃がかかるんですね、キープしてると。非常にコストのかからない窓際が作れるので、それも今起きてるんじゃないかと。

 

残間 自分は会社の中で重要人物と思っていた人が。

 

大垣 それは意外と思ってないんだけど。

 

残間 でも、最初に在宅にされたりしてね。あれ、俺ってこうなの? って言うのもあるんだって。

 

上野 いらなくなりますよね。

 

鈴木 まだまだお話を伺っていきます。

 

大垣 ものすごく社会が変わるような気がして。

 

鈴木 上野さん、このあとももう少しお話聞かせてください。

 

上野 はい。

 

鈴木 大人ライフアカデミー2020でした。

 

鈴木 引き続き上野千鶴子さんにご登場いただきます、よろしくお願いします。

 

大垣 そう言うわけで、今、先生が、認知症の話は先ほど伺いましたけど、今そう言う意味で、一番先生が面白いなと思われていることってなんですか。

 

上野 だから、本当に、文明の転換期なのかなって言う気がしてね。●(00:12:49)しなくていいじゃないって言うことになれば、これまで職場と家庭を往復しなくて良くなったんでしょう。

 

大垣 そうです。

 

上野 その必要がなくなって、その昔は職住一致、家族総労働団ですからね。

 

大垣 そうなんですよね。

 

上野 もう一回今度、ポストモダンはそっちに行くんじゃないのかなって気がしています。

 

大垣 そうすると、ここまで核家族って核分裂だったのが、今度は、融合に戻る。

 

上野 うーん、でも、そうですかね。子供育てるのは一緒にできるでしょうけど、みんな帰って分散して、私今一人ですけど、何の痛痒も感じません(笑)。

 

大垣 ですよね。でも、子育ては違いますよね。

 

上野 そうですね、子育ては濃厚接触ですからね。

 

大垣 ですよね。私、住み替えに引きつけようとしているところもあるんだけど、これからようやく、そう言う意味では、合理的に考えて東京就職地域居住っていうんでしょうか、そういう選択をする子も出てくると思うんですね。

 

上野 仕事ならどこでやったっていいですよ、別に東京じゃなくたって。

 

大垣 そうなんです、ですから、経済が動いてるとこがあれば。その何人かはやっぱり、でも、上を見るやつがいるから、いつまでたっても東京には、幾ばくかのそういう人々は残ると思うんですけど。なんかジョブベースでいいやって思う子達っていうのを考えてみると、あんまり存在してる合理性がないですよね、オフィスに。

 

上野 そうですよね。それに東京はオフィスが高いから、もう少し安いところに。

 

大垣 そうです、これは起きてますよね、結構空きが出てますから、大手町とかに。

 

上野 子供たちがe-learningやってますよね。そうすると、コミュニティの中で付き合いのうまくいかない子達がそれなら勉強できるっていう風になってきてるからね。

 

大垣 そうなんですよ。

 

上野 別に他人とうまくいかなくてもちゃんと仕事できる子たちっていると思うので。

 

大垣 そうそうそう。僕今はその教え子たちには、お前らがいいとこ就職できてんのは、たんに四年間時間を使って空気読めるようになったからだけだぞって言ってやってるんですけど。

 

上野 ははは。それを大学で教えているんですか。

 

大垣 それで、大前ら、空気読まないでいい世界に来た瞬間に大学で勉強しなかった事っていうのがモロに来ちゃうからなって言って脅してるんですけど。

 

上野 考えてみたら企業も、仕事のスキルじゃなくて、空気読む能力で採用してきたわけですよね。

 

大垣 そうだと思うんです。だから学閥っぽいものが存在してたんだと思うんですね。だけど、空気読まないでいいんだったら仕事できればいいんですもんね。

 

上野 そうです、その通りです。自分の欲しい分だけの対価を伴う仕事をすればいいんで、それ以上のことをやらないでいいですよね。

 

残間 上野さんにとっては、今まさにこの時代っていうのは、社会学者としても面白いんじゃないですか。

 

上野 こういう経験今回初めてだから。経験して思ったのは、前代未聞のことが起きるって言うよりこれまでずっと問題になってたことが増幅して起きるんだなっていうそういう考えですよね。

 

残間 そうですね。なんとなくこのまま行くはずがないってずっと思ってたことが、やっぱり行くはずなかったって感じがしましたからね。

 

上野 つくづく感慨を覚えるのは、世の中、不要不朽のものがこんなにたくさんあるんだねっていうことで。

 

鈴木 シンプルに分かったっていうのが。

 

上野 私たちの仕事も不要不急かもしれません。

 

大垣 そうですね。

 

一同 (笑)。

 

鈴木 上野さん、きょうは本当にありがとうございました。またぜひご出演ください。

 

残間 今度はぜひスタジオで。

 

上野 懐かしい方とお話ができて嬉しいです。

 

残間 スタジオにまたいらしてください。

 

上野 そうですね。リアルのほうがいいですね。

 

一同 ありがとうございました。

 

鈴木 上野千鶴子さんでした。