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全国銀行協会の「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」

水谷 きょうはどんなお話でしょうか。

大垣 ちょっと忘れていた、災害で家を流されちゃって、どうしましょうっていうやつで。意外と皆さんご存じないのが、平成27年の12月に、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」っていうのを全国銀行協会っていうところが出してるんですね。これは、これが出る前は、もうとにかく、家を流されてお気の毒ですけれども、借金は借金ですから返していただきますっていうのが大原則で。

残間 うーむ。

大垣 昔に比べると、もちろん少し被災者の支援金とか、阪神淡路のときよりも東日本のときのほうが大きくなりましたし、そのあとも充実はやっぱりローンは流れないっていうとこだったんですけど。実はこのガイドラインでは、そこが、やはり大変だろうということで、できるだけそれを圧縮してあげようということに。これは国のほうのそういう要請もあったんだと思いますが、銀行として対応しようねということになったんですね。これで、西日本豪雨で、初めてですけど、裁判所で調停というのをやっていただいて減免するんですけど、これが初めて成立がしましたよというのが、これが4月の6日付の新聞で出てまして。

残間 どのぐらい軽減されるんですか。

大垣 ええ。これですけどね。ここに書いてある例で言いますと、ご自宅が床上浸水で全壊になっちゃいましたと。1000万円のローンが残っていて、義援金で200万円を残した上で、470万円の債務は免除ということで。この残った土地でしょうね。この評価額の530万円について、8年で分割で払ってねということで。1000万円続いていれば大変だったものが、半分くらいに減らしてもらえたということなんですけど。これも当然にやってもらえるわけじゃないんですけど、こういうガイドラインがありますので。

残間 どういう仕組みでそういうふうにしてもらえるの。

大垣 ただもうどうせ返せないからっていうことで、調停ですからお互いに合意をするんですけど。結局銀行が、こういうものがないと、当然、権利で自分をもういいですとは言わないし、言う立場にもないですよね。民間の会社ですから。だから、全国の銀行協会でこういうふうにしようと申し合わせをしたので、そのあとはこれに従って、自分たちで決めたことだからやろうということになって。ある種心構えができたというか。ただやっぱり、で、「いいですよ」となると、どこまで減らしたらいいのか客観性がないので、やっぱり一応裁判所に行って合意はするんですけど、前みたいに、減らさないとかは。

残間 それって、払えない人だけに対する措置ではなくて、友達なんかは払っちゃったわけ。

大垣 ですから、払える方は当然払うべきですからね。

残間 ええっ、本当。

大垣 それがどうしても払えないときにどういうふうにするのかというのが、それが原則なんですけど。災害にあったら払わなくていいというルールがあるわけではないので。

残間 そうじゃないのね。

大垣 でも、前は、苦しくてもとにかくなくならなかったので。

残間 借金ですよと。

大垣 そうすると、抵当権を実行されて終わり。それが、こういうものがあると、銀行も、これで調停で減らせた分は自分で損失としてキチッと見ることができるので。

残間 なんとなく、払える人から見ると、つまんないって思うかもしれないね。

水谷 不公平感がある。

大垣 いや、うーん。

残間 いや、払えるんだから払いなさいよっていうのは、人の世としては当然なんだけど。

大垣 でもね。そういうふうに考える考え方もあるけど、じゃあ、一種、みんなで誰かがそうなるっていうことですからね。結局、みんなにそれを認めてしまうとどうなるかっていうと、その分も折り込んで住宅ローンの金利を上げないとやってられないということになるわけで。

残間 高くなっちゃう。

大垣 そうなると、当然、みんなが高くなるんですけど、結局、事故に遭う方はちょっとなわけですから、こういう形でやっていく。本当はもう一歩進んでいくべきだと私なんかは思ってるんですけど。とりあえず、これ、知らないでしょう。こういうことがあって、言えるんだっていうのを。

残間 日常の会話で、借金が残った人っていうほうが多かったからね。災害があったときに。

大垣 さっきみたいに、払えちゃった人はいいんですけど、払おうと思えば払えるんだけど、これ払っちゃうと子供の大学を諦めないといけないっていうような、それはあり得ますよね。そういうようなときに、こういうものがあるっていうことが分かってるっていう方が弁護士さんなんかに相談されれば、弁護士さんはご存じですので。

水谷 家とお金を考える、大人ライフアカデミーでした。