「消費」の最前線!? 消費者庁長官の伊藤明子さんと、消費者庁の役割と消費の現在を語る
金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司(青山学院大学法科大学院教授)さんと、団塊世代プロデューサー残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。
2020年12月5日の放送では、消費者庁長官の伊藤明子さんをゲストにお招きし、消費者庁の役割についてを語りました。「消費相談センター」などの設置が代表的な消費者庁ですが、近年、食品ロスなどの問題にも取り組んでおり、まさに「消費のトレンド」最前線であることをご存じでしたか。普段なかなか内側からの話を聞くことができない消費者庁が、どんな考えを持って消費者や消費と向き合っているのか。詳しくうかがいました。
- 大人の花道
鈴木 早速ご紹介します。本日のお客様、消費者庁長官の伊藤明子さんです、よろしくお願いします。
伊藤 よろしくお願いいたします。
鈴木 簡単にプロフィールいいですか。
残間 どうぞどうぞ。みんな分かんないもんね。
鈴木 ご存じの方もたくさんいらっしゃると思いますが、島根県出身で1984年、京都大学工学部卒業。建設省入省。2017年に国土交通省住宅局長、2018年内閣官房まちひとしごと創生本部事務局地方創生総括官総括官補を経て、2019年消費者庁長官に就任という、もう素晴らしいご経歴で。
残間 聞いただけですごいでしょう。
伊藤 いやいや、全然。
残間 でもまた可愛らしい、素敵な人なのよ。
伊藤 ありがとうございます。
鈴木 きょうは、伊藤さんに、消費者省長官として食品ロスについてお話しいただこうということなんですよね。
残間 に、限らなくていいんじゃないの。
大垣 消費者庁ってなんでもやってますもんね。
残間 ね。
伊藤 消費者庁って、11年前にできた新しい省庁で、消費者目線でみんな物事を見ようっていう、そういう省庁なので。
残間 この頃、食品ロスのあとにトクホで。
伊藤 ああいうのもあるし。食品の表示もあれば、あとは、悪質事業者対策。消費者被害の防止。
大垣 わりとそっち系のイメージがあるんです。食品ロスっていうと、むしろロスらないようにしようっていうのをやっていらっしゃるんですか。
伊藤 そう。どちらかといったら消費者庁って、要は、消費者を騙す悪い人たちを懲らしめるっていうのが元々のメインで、これが一番大事なんですが、最近は、そうはいっても普通の消費者とか、普通の事業者もいっぱいいるから、両方は要は協力して、いい消費社会を作ろうねっていうことを言っていて、その一環が食品ロスってことなんです。
大垣 なるほど。
伊藤 いろんな省庁をまたがっているんで、消費者庁がとりあえず取りまとめ役になってるって、そういう感じなんです。
残間 日本は、とても食べ物捨ててるとかって言われたからね。
大垣 あれ、期限を緩めてくれたのはいいですよね。なんかあんまり気にしない人だっていつも非難されてて。過ぎてるのにとか。でも大丈夫なんですよね。
残間 賞味期限とか消費期限ってのができてからみんなすごく神経質で。
大垣 そうそう。
残間 うちの息子なんか、ちょっと切れただけで、昨日とかでも、捨てなきゃって言うから、ダメって。
伊藤 大体、賞味期限と消費期限って、多分今ラジオで聴いて、耳で聞いてらっしゃると。
残間 味と費用の。
大垣 消費期限は、やめといたほうがいいやつですよね。
伊藤 それからあとは食べないほうがいい。
大垣 あれって、会社が決めてるんですか。
伊藤 会社が決めてるんですが、一応ルールがあって、ちゃんとこの日になったら腐っちゃうからとか、そういうので決めていて。賞味期限のほうは割と缶詰とかは日持ちするもんなんですよね。賞味期限は、別に過ぎたからといって食べられないわけじゃないんです。
残間 今の若い女の子とかって、例えば、なすをずっと冷蔵庫に入れて紫色の汁になるじゃない。そうすると、ジュースになったとかっていう子いるのよ。
伊藤 それは食べちゃいけない。
鈴木 それは強者ですね。
残間 お豆腐の腐ったのなんていうのは、鼻で匂いをかいでもわからないって。
大垣 豆腐って腐らせる?
伊藤 前は、クンクンしてこれはまずいとか、口でピリッとしたらっていうのをやるけど、今はみなさん分かんない。見るだけでやっちゃうから。
残間 それから数字で。味と消費でね。
伊藤 特に賞味期限を過ぎて捨てるのは、ちょっと違うかも。
残間 知ってる? 賞味期限過ぎてもどのぐらい大丈夫かっていう表が出回ってるの。
伊藤 大体、安全率が8割ぐらいで決まってるので、賞味期限がきても、まだそこそこ美味しく食べれてそれからあと、ダーッと悪くなって食べられなくなるわけだからだいぶ先なんです。
残間 生で食べないで、煮たり焼いたりすれば大丈夫っていうのは教えてないんだよね。大垣さんの領域の家のことなんかでも苦情ってくるの?
伊藤 家の事も来ますよね。怖いのはリフォーム詐欺みたいな。
鈴木 ああ。
伊藤 怖いのは、家の床下とか、小屋裏とか、見えない所を何回も来たりとか。あと最近災害が多いでしょう。そうすると、災害の後に「保険会社の方から来ました」って人が来て。
大垣 方角だけなんだ。
伊藤 私が代わりに見積もりをしますとかって言って。すごくそれは、損保もすごい困られていて。
大垣 そうでしょうね。
伊藤 要は、本来対象にならないものも「対象になります」って言って、申請された挙句、その人は立ち会い料取ったりするんですって。それってもう、全然そんな必要はなくて、ちゃんと損保はやってくれますから。だけどそういうのもあったりして、すごい困ってるんです。
残間 それでもやっぱお役所が、聞いてくれる窓口も大事だけど、消費者の方もちゃんと知ったり学んだりしないとまずいよね。
伊藤 そうなんですよ。やっぱり、騙されないためには基礎的な知識がないと。だけど怖いのは、最近は一人暮らしが多くなって。
残間 それで高齢化してるし。
伊藤 そう。前だと、「こんなこときたけど大丈夫」って言ったら、お父さんそれは辞めたほうがいいわよなんて言われてたのが、今、あんまり相談する人いないから。
大垣 確かにね。
伊藤 それがちょっと怖いんです。
残間 単独で、一人暮らしの人で、だんだんコミュニケーション、特におじさんみたいな人は取らないんもんね。
伊藤 かつ、共働きも多いと、「あのおじいさんのところ、おばあさんのところ、なんか変な人来てない?」っていう人もいないし。
鈴木 周りもね。
伊藤 だから、余計にみんなすごく、被害に遭いやすい状態にはなってると思いますね。
鈴木 伊藤さんにはこのあともお話を伺っていきます。
- 大人ライフアカデミー2020
鈴木 引き続き、消費者庁長官の伊藤明子さんにお話を伺っていきます。
残間 これ、伊藤さんの名刺見ると、「一人で悩まずまず相談。消費者ホットライン188」。
大垣 なんで、これここだけ関西弁なったんですかね。
伊藤 語呂合わせで。
鈴木 泣き寝入りはダメって。
伊藤 188って、かけてもらうと、色々、「これ変だな」ってのことがあったらかけてもらうと、地域の消費生活センターにかかりますから。ここで専門家の方に色々相談していただくと、いろんな。
鈴木 じゃあ、一人暮らしの方も。変な訪問とかきたら。
伊藤 そうそう。変な訪問販売だとか、この契約はちょっとおかしいんじゃないかなってことがあったら、ぜひ188にかけていただければ。
大垣 これ、早めにかけたほうがいいですよね。
伊藤 そうですね。
大垣 僕、最近、家の関係でもそういうのがありましてね。ちょっと悪い人はいいんだけど、騙すほうの人はわからないですよね。
残間 そうなんですよね。
大垣 本当に犯罪系っぽい人は、本当に騙しにきてるので。
残間 犯罪系っぽい人、なんて言わなくていいんだよ。
大垣 (笑)。
伊藤 でも、年間、188って、90万件から100万件ぐらいの相談が来るんですよ。そういうので、やっぱり「この事業者どうもおかしい」とか。苦情が多い人っておっしゃるように変な人が。
大垣 おかしいっていうのもあるけども、うますぎるっていうときはかけた方がいいですよね。
伊藤 そうなんですよ。やっぱりうまい話はまず一歩立ち止まってもらわないと、そんなに、投資ばなしなんかも、「これいいですよ」と言われて、「そんなにいい話だったらどうしてあなたがやらないんですか」って。人に教えてるほどないんじゃないって。
大垣 多分、ほとんど、冷静に考えたら絶対うまくいかない話が多いんだけど、プロのやつは、すごい上手いわけ。
残間 それを仕事にしてるんだもんね。
大垣 そう。だから、やっぱり、188って。
伊藤 ぜひ覚えてください。
大垣 意外とかけないけど、かけたほうがいいんですよね。
伊藤 でも、本当に、お年寄りが割とあると思ったら、若い人も、騙されちゃって。
大垣 さっきも雑談してたら、男の子が化粧品で騙されるって。
伊藤 そうなんです。最近は若い子は、消費者相談って、結局、今の消費生活がどうなってるかっていうのを反映してるようなもんだから。
残間 そりゃそうだね。
伊藤 前は、若い子は、女の子は美容は多い。エステの苦情とか、そういうのが多かったんですけど、今は、男の子も20代って、美容系が上位なんです。
残間 だって今、化粧品売れてるじゃない。リモートになってからとか、就活もあるでしょう。
伊藤 あとは脱毛とか。
大垣 脱毛ね。
残間 整形もあるでしょう。
大垣 整形。ちょっと興味本位ですが、私らぐらいのおじさんはどういうふうなものが。
伊藤 おじさんたちは、そうはいっても儲け話とか、あと、定期購入。健康食品とかで、今だけとか、お試しとかって言われたら、実は違ってて、2回目からもどんどん来ちゃって、解約したいと。
大垣 ああいうのは男の人も結構引っかかっちゃうんだ。
残間 今、家にいる男の人はものすごく健康食品を。
大垣 ああ、そうだね。
残間 それで、30分以内には、係員を増やして待ってますなんていうと、友達なんかも私と同世代の男の人もいっぱい買うよ。健康食品とかね。
伊藤 やっぱり、健康っていうのは皆さんの大きいテーマで。別に健康食品自体は悪いわけじゃないですけど。私達も、トクホをやってたり、機能性食品をやったりしてるから、それはいいんですけど。買い方はちょっと気をつけてもらわないと、よく見ると書いてあるんですけどね。それがちょっとわかんなかったりして。あとあと、始め500円だからと思って思わず頼んじゃったら、定期的に来ちゃってね。ひどいのはやっぱり、解約は電話じゃなきゃダメで、電話はいつも混み合ってますみたいなのとか。ちょっとこれは、法律の改正なんかも考えないといけないと思ってるんですけど。やっぱり、みんな巣ごもり消費になって、皆さん増えてますよ、それは。
残間 確かに、世の中の、時代を反映してるよね。
伊藤 そうなんです。
大垣 さっきの食品ロスに戻りますけど、そうやって騙されちゃったやつフォローっていう感じが強かったのが、こういうのがもっと増えるといいですね。
伊藤 消費者庁も、さっきの消費者被害の防止がもちろんこれが一番大事ではあるんですけど、やっぱり個人消費ってGDPの50数パーセントを占めてるんで、だったらいい商品しましょうっていうことだから。
大垣 そうそう。
伊藤 だからそのために、うまく協働しましょうっていう。
大垣 日本人って、こういうのちゃんとやると思うんですよね。意識が。
伊藤 でも、すごいんですよ。今食品ロスって、毎日大型トラックで1680台分。毎日お茶碗一杯ぶんだけみんな捨ててるんで。
大垣 確かにな。捨てるっていうのは。
残間 そうすると、トラックが。
伊藤 そうなんです。1680台分になるんです。だから、お米の消費量、一人分のお米の消費量と、食品ロスで捨ててる量はほぼ同じぐらい。
大垣 これ、しなくなるとどうなるんですか。全体的に食品を消費しないで効率的にはなるんだけど、そうすると。
残間 経済が。
伊藤 だって、廃棄してるためにはコストもかかってるし。だって、日本って、元々食料自給率37パーセントとかですから。皆輸入してそのぶん捨ててるってどういうことってみんな飢えてる人も世界にはいるし。
残間 本当よね。
伊藤 ノーベル平和賞を取った国連の世界食糧計画。あそこがいろいろ援助してるのの1.5倍なんですよ、捨ててるのが、日本で、年間。すんごい量捨ててるんで。
鈴木 ええっ。
残間 大垣さんがいうように、何かきっかけがあると日本人って。
大垣 日本人って割とやると思うんです。
残間 そういうのは恥ずかしいことだとかっていう風に知らしめるとやるよね。
伊藤 それから、元々もったいないって感じがあったのに。
大垣 もったいないって言葉あるよね。
伊藤 なんとなくそれが、インスタ映えするから、写真だけ撮って捨てちゃうとか。
大垣 会社も、あんまりもったいないってやられると売れないんじゃないかみたいなのがあって。
伊藤 恵方巻きってあるじゃないですか。あれなんて、今年はちゃんと予約を取ってやったら、量は減ったけど利益率は上がったんですって。
大垣 なるほどね。
残間 2、3年前までは大量に廃棄してたんだもんね。
伊藤 そう。やっぱり、ああいう季節ものって、この日しかダメっていうのあるじゃないですか。
残間 捨てたりすると、恵方もあんたには鬼門になるぜみたいなキャンペーンしないと。
大垣 親から言われたのは、京都なんか、何かする日が決まっていて、それってよく考えてあって、そのときにやればいいことになってるから、無駄がないように回ってるっていうのはよく言われましたね。そういうのも、思い出してくるといいのかもしれないね。
伊藤 なんとなく、買い過ぎたり、冷凍庫に入れとけばずっと大丈夫なんてつい思っちゃったりするところが私なんかもあるんですけど。そういうのも気をつけないと。
残間 ああいうのも、1ヶ月ぐらいなんだよね。
伊藤 そうなんです。ちゃんとチェックしないと駄目ですよね。あとはやっぱり、消費習慣も、新しいものじゃないと売れないからって言って、コンビニなんかもものすごい商品の納入をかなりゆとりのあるものしか受け付けませんって、返品が多かったりするんですよね。今も。
大垣 そうやって効率的にやって、ちょっとお金が余ると、今度はGo Toとかで使うっていうのもやんないと。経済も回していかないといけないし。
伊藤 別に、ケチケチしましょうって言ってるわけじゃないの。
大垣 締めるとこ締めて。ハレとケっていうんですか。そういうのを、ケジメつけていくといいのかもしれないね。
残間 それはどこから始まってんのかっていうと、やっぱり家庭の教育とか、そういうのは大きいよね。
大垣 消費者教育とか言われると、「消費者教育ですか」ってなっちゃうんだけど。
伊藤 勉強って言われた瞬間に嫌になりますよね。
大垣 リテラシーあげないといけないのは間違いないですよね。金融なんかは間違いなくそうで、教えないとどうしようもないところがあって、でもやっぱり教える機会がなくて。ちょっとだけ私の世界の話させていただくと、あれ、誰が受け持ってんですか、投資商品とかは。やばいやつは消費者庁なんだろうけど。
伊藤 投資商品は、金融庁。
大垣 僕、前、消費者法のところで申し上げたんですけど、やっぱり、違法じゃないんだけど不当な物っていっぱいあるわけ。
伊藤 ああ。
大垣 っていうか、ほとんどそうなわけ、金融のものって。で、だから、自分で守らないとやっぱりどうしようもないようなところがあって。ところが、消費者じゃないんですよね。投資家なんですよね。投資家になった瞬間に、競馬しにきてるんだから別にわかってるでしょみたいな感じになっちゃって、守ってもらえなくなるみたいなのがあって。
残間 伊藤さん、大垣さんはいつもこの番組でいうのよ。違法じゃないけど不当なものがあるから気をつけてって。
伊藤 そうですね。グレーなものっていうのはありますね。うちがすごく心配してるのは、2022年に成年年齢の引き下げってあるんですよ。もう選挙は18歳になるじゃないですか。契約はまだなんですよ。2022年なんです。
鈴木 そうなんですね。
伊藤 今は未成年で、うちの子なんか、エステの高い予約なんかしちゃって、そしたら私に電話がかかってきて。
鈴木 しちゃったんですか。
伊藤 お母さん知ってますか? って、いや聞いてたからよかったんだけど、知ってましたって言ってたらいいけど。
大垣 嫌だな、会社に「母です」とかって電話かかってくんの。
鈴木 身近なんですね、伊藤さんにも。
伊藤 それは、知ってますから大丈夫ですって言ったからいいんですけど、あれ、未成年の取消権があるから、本当は、「知りません駄目です」って言ったらそれで今は取り寄せる。2022年からは、高校出たらもうみんな一人前だから、取り消されないから、そんな電話なんかはもう当然かかってこないわけですよ。
大垣 僕は来年から、青学で、お金の1年生向けの授業を作って、担当することにした。
残間 そうか。18だもんね。
大垣 でも、分からないでしょう。
伊藤 今、一生懸命、高校でそういうことを一応教えて。でも、やっぱり実生活で実践してみないと分からないこともあるかもしれないですね。本当は。
鈴木 とにかく迷ったら188ですね。あっという間にお時間になってしまいました。ぜひ、伊藤さん、またいらしてください。お忙しいとは思いますが。
残間 本当に来てくれるかどうか、最初は心配したんだよね。忙しいから。
鈴木 ちゃんと来てくださいましたよ。ありがとうございます。
伊藤 せっかくの機会をありがとうございました。よろしくお願いします。
残間 ぜひ188にね。
伊藤 あと、消費期限と賞味期限は違いますから、あれもよく覚えておいてください。よろしくお願いします。
鈴木 消費者庁長官の伊藤明子さんでした。ありがとうございました。