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雑誌『ハルメク』編集長・山岡朝子さんと語る「大人世代」の住まいや暮らし、文化のトレンドやこれから

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金融・住宅のプロフェッショナルである大垣尚司(青山学院大学法科大学院教授)さんと、団塊世代のプロデューサー・残間里江子さんが、楽しいセカンドライフを送るためのご提案をお届けする番組『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』。

このブログでは、ラジオを聞き逃した方や、放送内容をもう一度確認したい! という方のために、人気コーナー「大人ライフアカデミー」の内容全てを、文字に起こしてお届けしています。

今回は、ゲストをお招きしてのスペシャル回。雑誌『ハルメク』編集長・山岡朝子さんと「大人世代」の住まいや暮らし、文化のトレンドやこれからについて語りました。一昔前は「シニア」とひとくくりにされ、文化を生み出す対象としては考えられてこなかった大人世代。

そんな中、60代女性をメインターゲットに据えている雑誌『ハルメク』は、37万部数という、低迷の続く雑誌業界では驚異的な売り上げを誇っています。まさに大人世代の文化を牽引する存在となっている『ハルメク』が、今考えていること、それから、これから大切にしていきたいものとは。

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鈴木 早速ご紹介いたします。本日のお客様、雑誌『ハルメク』編集長、山岡朝子さんと電話がつながっています。山岡さん、おはようございます、よろしくお願いします。

山岡 おはようございます。よろしくお願いします。

鈴木 山岡朝子さんのプロフィール、私から簡単にご紹介いたします。1997年主婦と生活社に入社。『素敵な奥さん』『CHANTO(チャント)』など、ライフスタイル系の雑誌編集長を歴任。2017年に株式会社ハルメクに入社。50代からの女性に向けて、健康、料理、旅、ファッション、美容など、様々なテーマを取り上げる月刊誌『ハルメク』の編集長に就任され、就任後2年で実売部数を二倍に引き上げました。雑誌の中では、読者をシニアとは呼ばないんだそうです。山岡さん、きょうはよろしくお願いします。

山岡 よろしくお願いします。

残間 私も大人世代という、中途半端な言い方ですけど、シニアって言わないために結構苦労して、club willbeっていうのを立ち上げたんですけど、『ハルメク』は一貫してシニアっていう言葉を使ってませんよね。

山岡 そうですね。

大垣 いまだにシニアっていう言葉を平気で使う雑誌って多いんですか。

残間 だけど、最近は、英語的になってるから。『ハルメク』は読者の中心が50代ですよね。

山岡 中心は60代なんです。

残間 そうですか。50から60。

山岡 50代からお読みいただいている。

大垣 ちょっと50の人には歳を取りすぎている内容が多いですね。

山岡 (笑)。そうですね。

大垣 最初、思い出します。15年前、私が、シニアだの高齢者だのいうと、残間さんが毎回毎回突っ込んで。「ダメよ、シニアなんて使っちゃ」って。私はずいぶんしつけられましたよ。

残間 日本語的に、カタカナでシニアって書くと、あまりいいイメージがなかったですもんね。

大垣 でも、どうですか。最初に聞いてみたいのは、どう呼んだらいいかってのも意外と悩みませんか。シニアって呼ばないのは簡単なんですけど。

山岡 はい。

大垣 で、何? って言われると呼びにくくないですか。

残間 だから私は、しょうがないから大人世代って。

大垣 ね。僕らは大人って呼んでるんですけど。

残間 でも、山岡さんのところもそうですもんね。

山岡 そうですね私たちも大人女性とか大人世代とか。あと、読者であればハルメク世代っていう言い方を。

大垣 あー。

残間 ハルメクっていう雑誌は、雑誌だけで完結していないで、雑誌の外側にいろんな教室があったり講座があったりして非常に立体的なんですよね。

山岡 はいそうなんです。ありがとうございます。

大垣 だから、株式会社ハルメクっていうのでそういうシステム全体をやっていこうっていうことなんですか。

山岡 はい、そうなんです。雑誌の中に、残間さんにも出ていただいたんですけど、雑誌の中で読んだ情報が今度は講座で本人から直接聞けるような機会があったりとか、あとは、載っている情報に役立つ商品が通販で買えたりとか、そういった、全体的に世界観を楽しんでいただける。

大垣 それは新しい感じの動きですね。

残間 それと、生き方みたいなものと、生活のすべというか手段というか、実用記事とが非常にいいバランスで入ってますよね。

山岡 ありがとうございます、嬉しいです。

残間 聞きたくても誰に聞いていいのか分からないとか。最近、グレーの髪の毛にする人が、自然にする人が増えてるんだけど、私でもできるかしらみたいだと、すかさず次の号にそれが出てたりしますよね。

山岡 そうですね。すごく、いわゆる私たちがハルメク世代と呼んでいる方々が、今何に関心を持っていらっしゃるかとかを、ものすごく、外から想像できないぐらい、熱心に調べてます。

大垣 なるほど。

残間 よく、読者の方達を集めて、リサーチしたり、色々なさってますよね。

山岡 そうですね。ハルトモって呼んでるんですけど、ハルメクの友達っていう意味なんですけれども、モニターさんが3000人ぐらいいまして、常々座談会を開いたり、アンケートを取ったりして、交流しています。

残間 ついつい、私、女性誌の編集長の経験もありますけど、格好良く作ろうと思うばかりに、現実と乖離するっていうことってなきにしもあらずなのが女性誌なんですよね。

山岡 そうですね。それも一つの役割ですけどね。

残間 そうですね。ある種、引っ張っていくっていう意味ではそうなんだけど、山岡さんのところは、ちゃんと、現実の、今の現実を直視しつつ、ちょっと半歩先を見るっていうのが非常に。山岡さんの、編集長のセンスですもんね、基本的に。

山岡 ありがとうございます。

大垣 でも、最初にご入社なさった年とか考えてみると、ハルメク世代よりは下から見上げてらっしゃる感じなんですよね。

山岡 そうですね。ハルメクに行こうかなって決まった時に、両親に説明にいったら母親が読んでいたということが分かりまして(笑)。

残間 山岡さんって、お子さんがまだそんなに大きくないですよね。

山岡 まだ小さいです。

残間 そうすると、ちょっと、ハルメク世代の後輩なんだね。

山岡 そうですね、人生の先輩に色々教えていただける、お得な仕事だと思っております。

残間 私のところにも最近50代の中盤ぐらいの人がすごく相談に来るね、これからどうしようって。

大垣 すごいチャレンジだなと思うのは、普通、これまでだと、年取った人が若い子を向いて、やればいい話が結構多かったのが、これだけ大人世代が増えてきたときに、見上げて仕事をするって、割とどこの組織も経験がないことだから、上手にやるのって難しい。まだ確立されてないですよね、やり方が。

山岡 そうですね。確かに編集部員って誰もシニアになったことがないんですよね。シニアとあえていいますけど。その世代になったことがないんですけど、そこを埋めるために、ハルメクには社内にシンクタンクがありまして。ハルメクって定期購読という仕組みをとっているので。書店に置いていなくて、全員、申し込みをいただいてご自宅に届けているんですね。っていうことは、全員の住所がある意味わかるということがあって、たくさんアンケートを取らせていただいたり、読んでいてどうだったかとか、そういうことをお聞かせいただいて、それを集計したり、分析したりして、私たちもシニアの気持ちになれるように勉強していく、そういう仕組みが社内にあります。

残間 直販で40万部ぐらいいってましたっけ。

山岡 今、37万部です。

鈴木 すごいですね。

残間 なかなか、直販でっていうのは大変だよ。

鈴木 このあとも、雑誌『ハルメク』編集長、山岡朝子さんにお話をうかがっていきます。この後もよろしくお願いします。

山岡 よろしくお願いします。

鈴木 引き続き、雑誌『ハルメク』編集長の山岡朝子さんにお電話でお話をうかがいます。よろしくお願いします。

山岡 お願いします。

大垣 そういう意味では、せっかくの機会で、ハルメク世代のことをよくご存じなので、私、15年ぐらい前から、シニア層の住み替えのお手伝いをしてきているんですけど、最近、ハルメクの世代の方々って、だいぶ状況が変わってきていますよね。そういう中で、これまでに住んだ家から新しいところに移るっていうのは、昔から言われているけどそんなに広がっていないじゃないですか。そのへんのところをご覧になっていて何か感じたこととかありますか。

山岡 そうですね。やはり何度も、いわゆる終の棲家というものをどう考えるかっていうアンケートや調査はしていて、結局8割位の方が気持ちの上では最後まで自宅にいたい、今の家にいたいって。

残間 今の家に?

山岡 はい、今の家に。

大垣 若い子たちってちょっと田舎に行きだしてるじゃないですか。

残間 シェアハウスしたりね。

大垣 ああいう感じで、ハルメクの世代ももう一回ワンチャンスを。おっしゃっていたように、中核が60代ってなると絶対まだまだ若いですよね。ですからワーケーションがまだある年なんだけど、どうやってプロデュースされるんだろう。

山岡 そうですね。

残間 私の周りだとですね、女友達どうしで、一緒に暮らすっていうよりは近居というか。同じマンションの中に、それぞれの事情に合わせて。でも、近くに住もうよっていう、この指止まれみたいな。

大垣 そうね。

残間 私と一緒にそばにいたいっていう人、7人ぐらいいるもん。

鈴木 おお、すごい。

大垣 マンションじゃなくてもうちょっと別でもいいじゃんと思うんですけどね。

残間 そこに介護施設なんかが良い形で付属でついてたりするといいんですけどね。まだじゃあ、ハルメクの読者の皆さんはそこまでは真剣に、深刻に考えている感じではなくて、その手前で、まだ人生を楽しもうっていう感じの人が多いですか。

山岡 そうですね。でもサービス付きの住宅ですとか、そういった情報を載せるとすごくお問い合わせはくる。

残間 そうですか。やっぱり関心はあるんですね。

山岡 はい。今すぐ引っ越すというよりは、情報をたくさん集めて納得のいく選択をしたいというお気持ちがすごく強い。

大垣 僕はすごくビジネス側の怠慢じゃないかと思っていて。そうやって終の棲家って4LDKに2人で住んでて、次はその、話になってるような、ケアがついてるような話になるんだけど。

残間 あいだがね。

大垣 本当は、間にちょっと自然があって、豊かで、そういうところにみんなで住まないかっていうことでお金を儲けたいっていう人が出てきてもいいんじゃないかと思うんですけど、なんで出ないんですかね。そういうニーズって聞いても出てこないんだけど、作れば「良いな」と思うような話みたいな気がするんですけど。

山岡 そうですね。

残間 確かにそうね。それから、ハルメクの読者の方は、いわゆるお仕事してる方っていうのはどのくらいの比率ですか。

山岡 結構、半分以上が仕事を。

大垣 なるほど。

山岡 年々上がってますね、やっぱり。

鈴木 働き続ける人が増えているんですね。

残間 組織で働いている人が多いんですか、それとも個人で働いているとか。

山岡 組織で働いている方も多いですし、むしろ最近になってお仕事を始めたっていう方も。地域のコミュニティーの中で役割を得たりとか、今までの経験を生かして、例えば保育園にお手伝いに行っている方とか、図書館で案内をする係を始めたとか。そういうような方も多いですね。

大垣 37万部数も発行されていると、もう、日本中にいらっしゃるんですね、読者が。

山岡 そうですね。

残間 コロナの影響っていうのは、どういう形で出ていますか。

山岡 コロナの影響は、ハルメクにとってはすごく、ハルメクが必要とされる状況によりなったなと。というのは、書店に行かなくてもハルメクはお家に届くんですね。1年分先にご注文いただいているので、どんな状況であっても、決まった日にきちんと雑誌がおうちのポストに届くので、一番大変だった時期は、ハルメクだけがお家に外からやってくるお客様というか、楽しい。

残間 情報源でもあるしね。

山岡 そういうふうに言っていただいて。テレビをつけると、コロナのことばっかりやっていてちょっと気が滅入ったりで。そういうときに、普通に綺麗なお庭の写真とか、そういうのが届いて嬉しかったって言っていただいて。

残間 日頃から健康については、菊池体操とか、人気のシリーズもありますし、健康についてはすごく気配りしている雑誌ですよね。

山岡 そうですね。健康の特集も、この1年間はいつも以上に増やしまして。家でできることを。

大垣 私の、お金の話なんかはどうですか。

山岡 とても人気があります。

大垣 そうですか。やっぱりお金はやるんだ。どういう感じでご興味をお持ちになるんですか。

山岡 一番は、途中で貯金がなくなってしまったりとか、今、何歳で生きるか、いい意味でもよくない意味でも分からないので、やっぱり、備えるに越したことはなくて、それが、例えば自分が一人になった後暮らしていけるのかとか、あとは、ご主人がもし先立たれた場合に、年金だったりとかそういうものがどうなるのか。将来の、長い目で見たご不安がありますね。

大垣 僕は、専門の一つが、金融ジェロントロジーって呼んでまして、お金の老人学っていう名前で。おっしゃっている通りで、デキュミュレーションっていうんですけど、お金がなくなる前に死ぬっていうんですか。言い方は悪いけど。死ぬ前にお金が尽きないようにする技術っていうのが、すごく難しくて。

残間 日本ではそういうのはないんですよね。

大垣 世界的にまだ開発されていないんです。

残間 これからどんな方向っていうか、方針でやっていきたいなって。こんなこともやっていきたいなって山岡さんは思ってらっしゃるんですか。

山岡 今は、ハルメクも、紙の雑誌も37万人の方に読んでいただいて、好評なんですけど、一方で、これから、この世代の方も、最初の情報はwebで探すっていう方も非常に増えてきていまして、webの上でもハルメクは今発信しているような情報をお届けできるような体制を整えていきたいなっていうのが、今大事にしていることです。

残間 元々リテラシーの高い人たちが多いですもんね。

山岡 そうですね。ハルメクウェブっていう、ウェブ版のハルメクみたいなものを3年ぐらい前に作ったんですけれども、非常にたくさんの方に読んでいただいて、今はLINEとかYahooにも記事を配信して、月300万人ぐらいの方が見てくださっていますね。なので、この世代の方もwebでたくさんご覧になるようになったんだなと。

大垣 見てると、うちのカミさんなんかなるほどと思ったけど、流しっぱにしてますよね。YouTubeっぽいやつを。目はやっぱりキツいんですよね、字が小さいから。それで、ずっといろんな講義みたいなものが流れていたり。ラジオみたいになってきているんですね、スマホが。

山岡 そうですね。私たちも、雑誌に載っているようなことを声でお届けしたりできないかなとか、考えたり。実は。

残間 それ、流行るかも。

鈴木 今度うちの番組ともコラボしたりなんか。

大垣 ぜひ。

残間 ぜひ一度お会いしたいと思っていますので。

山岡 はい、こちらこそです。

一同 きょうはありがとうございました。

鈴木 雑誌『ハルメク』編集長、山岡朝子さんでした。