最初で最後のメディア露出!? 前・国家安全保障局長の北村滋さんの素顔に迫ります
鈴木 では、ご紹介しましょう、きょうのゲスト、北村滋さんです、よろしくお願いします。
残間 よろしくお願いします。
北村 よろしくお願いします。
鈴木 北村さんのプロフィールをご紹介いたします。1956年のお生まれ、東京都出身。私立開成高校、東京大学法学部を経て、1980年、警察庁入庁。フランス国立行政学院、在フランス大使館一等書記官などを経験。徳島県警本部長、兵庫県警本部長などを歴任後、2011年内閣情報官に就任。2019年、国家安全保障局長、内閣特別顧問。今年7月に退官されました。現在、北村エコノミックセキュリティの代表をお勤めでいらっしゃいます。北村滋さんです、よろしくお願いします。
残間 どうですか、大垣さん。
大垣 ちょうど警察庁に入られたっていう。これ、多分普通の方はお分かりにならないかもしれないですけど、私も、一応国家公務員の受けたじゃないですか。あの当時は、ご否定なさるかもしれないけど、大蔵省と通産省と警察庁っていうのが、一番できる方が、受かった中でも一番入りにくいところなんですよね。
残間 そういえば、北村さんと長い付き合いだけど、なんで警察庁に行ったのか、聞いてなかったね。
北村 最終的には、拾ってもらったところが警察庁だったと。
大垣 私も実は警察庁を回ったんですけど、とてもいい雰囲気のところですよね。
残間 そうなんだ。
大垣 全然違うんです、大蔵省とか行って、そのあとに警察庁とか回ると、うわ、行きたいなっていう、人を大切にするっていうのがすごく出てるところなんですよね。
残間 北村さんは、仕事をしている最中は、日本のCIA長官とか、官邸のアイヒマンとかって言われたけど、私たちの間では本当に、楽しい、面白い、趣味も豊かな人で、ええって。
大垣 残間さん、一度、国家安全保障局っていうのが何かっていうのは、多少簡単に、ものすごくかいつまんでお話しいただかないと意外とみんな知らないっていうか。ざっくりは分かるけど。
残間 私も内閣情報官のほうが、国家安全保障局長よりも偉いと思ってたから、局長になったときに、北村さんって降格したの? みたいに聞いたの。
北村 国家安全保障局っていうのは、法律で国家安全保障会議っていうのがありまして。その事務局をやってるんですね。特に4大臣会合って呼ばれているものについては、副総理がいらっしゃいましたので、5大臣という状況だったんですけど。第一回はまだ開かれていないのかもしれないですね。岸内閣では。
残間 5大臣って、どこの大臣?
北村 ですから、総理、官房長官、それから防衛大臣、外務大臣。
残間 それを司るの、事務局長で。
北村 そうですね。3+2っていうことですね。財務大臣自体は入っていないんですけど、副総理がメンバーという。
残間 仕事は何なんですか、スパイを探すとか。
大垣 そんなわけないですよ、またそんな。
北村 そういうことじゃなくて、基本的にはやっぱり、4大臣会合で、国の安全保障に関する、さまざまな政策を決めていくという場なので、それの会議の準備とか、そういうことをしますね。
大垣 案外最近ですよね。
北村 そうですね、安倍内閣で、とりあえず設置されました。
大垣 それまでは、防衛とか外務って、本来一つのものなんだけど、バラバラになりがちだったところを、ギュッとまとめて。
残間 あんまり日本って、そういうところについての危機意識ってない人が多いように見受けられる。
北村 今、ちょっと、大垣先生が仰った通り、やっぱり、外務省と防衛省がそれぞれバラバラにっていうか。特に、同盟国との関係においても、そういった形の関係だったこともあって、内閣として、統一的な形で安全保障っていうのは、国民の安全に直接関わる形で、それがなるべく迅速に決定できるようにということで設置されたと。
残間 一番身近なところでは、何なの。私たちが生活をしていての安全保障は。
北村 尖閣諸島がありますよね。尖閣諸島の周辺海域は、ほとんど毎日、中国海警と、海上保安庁の船舶が睨み合っているという状況が続いていますし、それから、スクランブルっていうのがありますけれども、領空侵犯をする可能性がある飛行機、これに対して、自衛隊がスクランブルをかけるんですけど、これは2019年では約1000弱ですね。
残間 そんなにあるの。
大垣 1日3回か。
残間 人々はみんな、知らないで生きてるよね。
鈴木 うん。
北村 そのうち、半数以上が中国機に対するものという状況があります。これは統計的な話ですけど、NATOってございますよね。NATOは主としてロシアとの関係でしょうけど、ここのスクランブルの回数は、報じられているところによると400回ということなので。
残間 ふーむ。
北村 割と、我が国は安全なんだなって思われている方が多いと思うんですけど、グレーゾーンも含めてですけれども、そういった、緊張感の非常に高いところに位置しているっていうのが現実だと。
鈴木 引き続き、北村滋さんにお話をうかがいます。北村さんは、中央公論新社から、『情報と国家』という本を、最近上梓されましたが、たちまち重版で。
北村 ありがとうございます。
残間 ものすごく分厚いのにね。
鈴木 500ページ。
残間 でも私、一応全部のページは、ページは繰りました、夜更かしして。失礼だと思って。せっかく。
北村 嵩張るものをお送りして申し訳ありません。
残間 いやいや。
北村 送った方には、そういうふうに言ってるんです。
残間 教科書だよね。
大垣 教科書ですよね、どっちかっていうとね。
残間 でも、面白い。私はさっき007って言ったけど、北村さん自身は真面目な人だからね。そういう感じじゃないんだけど。でもやっぱり、ドラマのネタになりそうなこととか、いっぱいあるよね。想像力を逞しくすると。
大垣 あと、やっぱり、あんまりこういうのを組織だっては教えてないっていうんですかね。
北村 ないですね。
大垣 大学って、なんとなく、リベラルでありたい人が多いから。こういうのをやると浮く感じもあるんですけどね。
北村 リベラルだと思うんですけど(笑)。
大垣 ごめんなさい(笑)。でも、こういうのを避ける。
残間 系統だててやるのはね。
大垣 安全保障に興味を持たないっていうのも、こういうのに触れないっていう雰囲気がすごくあったりして。
残間 私、北村さんとこの頃話してて、インテリジェンスっていう言葉がよく出てくると。普通みんな、インテリジェンスって、知性とか、知能とか。
大垣 スパイじゃなくてね。
残間 情報っていう訳があるっていうのを知ってるようで知らないよね。
北村 それはそうかもしれないですね。
残間 ね。だから、みんなインテリジェンスっていうことを仕事にしてるのよっていうと、何、それって。
大垣 企業なんかでも、企業インテリジェンスって。わりと普通には使うんですけどね。でも、あんまり、しっくりいかないですよね、この国では。
北村 そうかもしれないです。ただ、そういった活動は、今に始まったわけじゃなくて。昔の話だと隠密。こういうのも、国内的な動きかもしれないですけど、情報はいろんな局面で大事にはされてきたと思うんですけど。戦国時代なんですけど。
残間 そうだよね。そうすると、忍者とか、クノイチとか。
大垣 僕が、今の仕事との関係で言いますと、介護とか、そういうところも、接点が出てまいりますでしょう。びっくりしたのは、最初に、山海先生が介護スーツをお作りになったときに。
残間 ロボットのね。
大垣 ものすごく気を使われて、乗っ取りができないような会社の仕組みになさって。それで、なんでそこまで、変な感じで、変な感じを受けたんです、最初。そういうことをおやりになるのかって言ったら、やっぱり、最初にそういうものに興味を持たれたのが、陸軍なんかの行軍をやるときに、同じ技術で、重たい70キロとかっていうものを、簡単に動かすことができるので、一番興味を持ったのは介護の人たちじゃなくて、軍の関係の方だったっていうので。そういうところで、ものすごく身近にこういうことがあるんだっていうのを、そのときに思って。ただインテリジェンスっていう言葉で、思っている、まさに007みたいなやつとはかなり違う様子になってきていますよね。
残間 最近聞かれるようになった、経済安全保障っていう言葉をみんな言い出したのだけど、私随分前に北村さんから聞いていたので。今の話、そうですよね。
北村 かなり汎用技術に近い話ですけど、今の話は、今までの、過去の情報事案っていうか、事件っていうんですかね。これはやっぱり、先端技術が標的になっているものが、非常に多いですよね。それから、先端技術で非常に性能が高いものについては、輸出制限もされている場合、あえて性能を低く見せるということもあって。
鈴木 へえ。
北村 そういうやり方もあって、利潤追求をする過程で、そういうことをするっていうこともあるんですね。
残間 でも、その技術や情報を欲しいっていう相手先もあれば、それを売ってお金にしたいっていう、国内の企業の人たちの思いもあるから。
北村 そうですね。
残間 なかなか難しいですよね。
北村 おっしゃる通りですね。
残間 こんなに固く見える北村さんだけど、聞きたいことあるでしょう。
鈴木 お料理が、大変得意だっていうところで。
北村 そうですね、趣味は料理ですね。
鈴木 得意料理は何ですか。
北村 スペアリブね。90度から100度ぐらいで、結構長い時間、天火っていうんですか。オーブンレンジっていうんですか、ああいうのでやりますね。
鈴木 インテリジェンスとおっしゃった同じ口から。
残間 天火。
大垣 どっちかっていうと、イライラッとなさりそうな感じ。
鈴木 じっくりするのが。
北村 そういうふうにやらないと、美味しくならないので。
残間 肉料理が多いですよね。
北村 スペアリブは長く。
残間 写真を送ってくれるけど、美味しそうだもんね。あれ、家族に振る舞うんでしょう。
北村 そうですね。
鈴木 へえ。
残間 そういう一面もあれば。普通だよね。孫を膝に乗せている。孫のほうがガッシリした、貫禄のある孫を抱っこする北村さんの写真を見ると、いいよ、なかなか。
大垣 新しい会社では、ちなみに、どんなことをおやりになっているんですか。
北村 これは、先程のお話があった通りなんですけど、クライアントからの経済安全保障。コンプライアンスも多少あるのかもしれないんですけど、ご相談いただいたら、それにお答えするっていうことですね。
大垣 へえ。
残間 会社も作ったばっかりですしね。
北村 そうですね。
残間 七夕にやめたばっかりだしね。
北村 そうですね。
鈴木 7月、そうですよね。
残間 多分、きょう、こういうのに無理矢理引っ張り出してきたんだけど、メディアに。こういう感じでメディアに出ないもんね。インタビューだけだもんね、これまでって。
大垣 っていうか、メディア側も、こんないい加減な呼び方はできなくなっちゃって。
残間 ああ、そうか。私がいい加減だから。
大垣 残間さんだから。
残間 もう親友だもんね。30年来の。だから、やっぱりこういう仕事をしてくれている人がいるから、私たちはやっぱり、平和に生きていけているっていう部分もあるからね。でも、機密みたいなの、絶対に言わないからね。
北村 それはそうでしょう(笑)。
残間 北朝鮮の問題とか。
大垣 (笑)。
残間 雑誌で書かれていたけど、トランプ大統領に会ったその直後に、プーチン大統領に、1週間以内二人に会った男みたいに書かれてたけど、「ねえねえ、どうだったの?」とか聞いても、「暗くてよく見えなかった」とかね。私には言いませんね、もちろんね。
鈴木 わあ。
残間 北朝鮮のこととかもね。だって、9年半やってたらね。この間の9年半って、やっぱり、日本の安全保障のみならず、日本の置かれている国際的な立場からいうと、結構。ときどきいないのよ。いないときには、どこか、中東とかアメリカとかヨーロッパに行ってるんだろうなと思って、それで私は007の世界を思い描くわけよ。
大垣 (笑)。
鈴木 絶対言っちゃいけないことは、当然、残間さん、親友にも言わないわけですけど。
残間 家内にも言いませんからって言いますからね。
鈴木 寝言で言っちゃうとか、そういうプレッシャーはないんですか。
北村 寝言派じゃなくて、歯軋り派なので。
一同 (笑)。
鈴木 よかったですね。
残間 絶対言わないと思うよ。言えないよね。自分一人の問題じゃないもんね。
大垣 僕なんか絶対、王様の耳はロバの耳みたいになりますよね。
残間 私なんかすぐ言いたくなるけど、そういう人間はだめなのよ、インテリジェンスの周辺には行けない。
鈴木 酔った勢いでとか、絶対だめですよね。
残間 酔っても変わらない。
大垣 大丈夫ですよね。
鈴木 佐藤優さんが、北村さんのことを「英語フランス語抜群にできて、CIAやMI6トップとのカウンターパート」と評してらっしゃるんですけど、こういうCIAのトップとは、どんなお話をしているのかっていうのも。
北村 仕事の話ですよ。
鈴木 雑談とかは、全然。
北村 ご夫妻でお付き合いすることもありますので、そういうときは雑談します。
残間 北村さんの奥さんは、フランス語の先生やってらして、とっても美しい人。
大垣 エナへ行かれたんですもんね。すごいところですよ。
鈴木 こういう形で、フリートークをしていただく機会っていうのは、滅多にないですよね。
北村 これだけでしょうね。
残間 いやいや、分かんないよ。
鈴木 貴重な機会をありがとうございます。
残間 あの番組にも出たなら、うちにも出てくれみたいな。言われても、ダメとかってね。大人ファンクラブに出たんだから、うちにも出てくれって言われたら、ダメって言ってねって。
鈴木 ぜひまた。
残間 ねえ。
鈴木 大人ファンクラブには出てきただきたいと思いますが。あっという間にお時間になってしまいました。きょうは、前の国家安全保障局長、北村滋さんをスタジオに迎えて、お送りしてきました。北村さん、ありがとうございました。
一同 ありがとうございました。